岡野歯科医院
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役立つ歯のコラム

低い日本の根管治療の成功率、再治療にならない根管治療とは。

記事概要

日本の『根管治療(歯の根っこの治療)』の成功率が低いことをご存知ですか?なんと失敗率が50〜70%のため、再治療を余儀なくされているのが現状です。そこで、根管治療の役割、うまくいかない原因を考え、根管治療を成功させるためのポイントについてご説明します。

1根管治療の再治療は、根管治療が上手くいっていないので、より確かな根管治療法で改善をしなければいけないということ

むし歯や歯周病などの原因で止む無く、歯の神経をとらなければなければならなくなった歯は、『根管治療』という歯の根っこの治療(歯の神経の治療)を行います。

歯科医院にて、この『根管治療』を行った後は、痛みも落ち着きますし、通常、治療も終了となります。 しかし、歯の神経を抜き、完全に治療が完了したはずの歯の根っこが、再び疼いたり痛みが起こったりするケースがあります。

このような状態だと、『根管治療』が終わっていても、再治療を余儀なくされます。これが『再根管治療』です。 しかし、日本における『根管治療』の成功率は残念ながら非常に低く、再根管治療になる確率が高い事が分かっています。下のグラフをご覧ください。

再根管治療グラフ

日本での根管治療の成功率について、東京医科歯科大学の歯内療法学講座(歯の神経の治療の講座)が調べたデータです。 このグラフは、東京医科歯科大学むし歯外来での根管治療のX線(レントゲン)透過像調査(神経の治療の失敗率)です。(調査期間:2005年9月〜2006年12月)このグラフから分かるのは、根管治療を終えた後の歯が、どのくらいの割合で歯の根の先に膿を持っているかという事です。

これらのデータから、日本の根管治療の失敗率は50〜70%であるということが分かります。

逆をかえせば、成功率は30〜50%と思われます。 これは、かなりショッキングな数値ですが、残念ながら現実なのです。成功率よりも失敗率が高いという、歯科医としては顔を下に向けたくなる数字です。

当時としても、公表するにはかなりの勇気が必要だったと思います。 それに対し、アメリカでの根管治療の成功率は90〜95%と言われています。それでは、なぜ、日本と米国では、これほどまでに根管治療の成功率に開きがあるのかを解説していきます。

2そもそも、根管治療とは何か?

まずは、根管治療の役割について考えてみたいと思います。

そもそも根管治療とは、家を建てる工程に例えると、基礎工事にあたります。

つい最近も、日本のマンションにおいて基礎工事の手抜き工事が発覚し大騒ぎになっていたことがあったと思います。あの騒動では、結局、基礎工事からやり直しになったはずです。つまり、上物がどんなに立派でも、基礎工事がいい加減だと、基礎の上に建つ建築物も全て無駄になってしまうということになります。

最悪、基礎工事からやり直し….という事になれば、そこまでにかかった費用はもちろんのこと、それまでかけた時間も労力も、全て無駄になってしまいます。 歯の治療も同じことが言えるのです。 歯の基礎工事である、根管治療が上手くいっていなければ、その上に、どんなに綺麗な被せ物を高額な費用をかけて被せても、全て無駄になってしまうのです。

ですから、根管治療は重要なのです。 つまり、根管治療が成功していなければ、本来は被せ物をしてはいけないということです。 何故なら、根管治療を終え、被せ物をした後に根管治療の問題がでてくると、先に述べたマンション問題のように、せっかく(高額な費用をかけて)綺麗に作った被せ物を外して、一から根管治療をやり直さなければならないからです。

根管治療は歯の大事な基礎工事であり、その歯の命運を決めてしまう大切な治療なので、根管治療成功率を上げていかなければなりません。

Photo.根管治療とは
根管治療とは

家を建てる工程に例えると基礎工事

3根管治療は最初の治療が肝心!

それでは、根管治療が上手くいかない原因を説明していきます。

根管治療の失敗は、お口の中にいる細菌が根管内に感染することによって起こります。逆に、感染がなければ根管治療は失敗しません。 実は、根管治療は、特に最初の治療が重要です。 専門用語で、まだ生きている歯の神経をとる(最初の)処置を抜髄と言い、すでに抜髄済みの根管を再度治療する、2回目以降の治療を再根管治療と言います。

再根管治療が必要なケースは大抵、根管治療後にまだ根管に感染が残っていて、根の先に膿などの病巣を持っている場合が多いのです。 再根管治療になってしまうと、(最初の)抜髄とは違い、もうすでに複雑な根管内の奥深くに細菌が入り込んでいるため、細菌を完全に除去できず、根管治療の成功率が下がってしまいます。 必然的に、初回の根管治療(抜髄)より、2回目以降の根管治療である再根管治療の成功率は下がるのです。 だからこそ、初回の抜髄で根管治療を成功させなければならないのです。

しかし、根管治療は皆さんが考えるほど簡単ではありません。 口の中は、バイ菌だらけですし、歯の神経の通り道である根管は針の先ほどに細かったり、曲がっていたり、根の中で複雑に枝分かれしていたりと、根管の奥の奥まで入り込んだ細菌を根管から除去するのは、歯科医の私たちでも頭を抱え込むくらい難しいのです。

この治療の難易度の高さが、先に掲示した根管治療の失敗率にあらわれているのです。

4根管治療を成功させるために絶対必要なこと

それでは、ここからは、根管治療の成功率をあげるためのポイントを説明していきます。 一言で説明するならば、改善するためには、根管内に入り込んだバイ菌を完全に除去するという一点に尽きます。 まずは、根管治療中に唾液からの更なる感染を防ぐためにラバーダム防湿は必ず必要です。

ラバーダム防湿とは、ゴムのシートに穴を開けて治療する歯を一本だけ通し、シールドすることですが、その時に、必ず隔壁の作製が必要です。下記はラバーダム防湿の動画です。動画の方が分かりやすいので、ぜひ御覧ください。

管治療が必要な状態の場合、大きく歯が欠けていることが多いので、ゴムのシートをかけられないため、根管治療の準備として、まずは隔壁を製作します。 次に、根管は複雑に枝分かれしていたり曲がっていたりしていることも多いので、歯科用CTによる根管の三次元的な診断を行います。レントゲン写真では、見えない部分が見えることが多く、根管治療では歯科用CTが大きな力を発揮します。

更に重要なのが、治療自体に、治療用顕微鏡を使うことです。肉眼やルーペでは暗くて見えない根管の奥の奥まで、治療用顕微鏡は覗くことができます。 ただ、根管の状態のチェックだけに歯科用顕微鏡を使い、実際の治療は肉眼やルーペで行うのは意味がありません。それでは、肉眼やルーペでの治療と変わらず、勘や手探りの治療になってしまいます。チェックのみではなく、実際の治療時にも、常に歯科用顕微鏡を覗きながら治療することで、目視で状況を把握しながら適切で確実な治療器具の操作ができます。

そして、肉眼やルーペでは暗くて見えない根管内をマイクロスコープで奥まで覗きながら殺菌・消毒していきます。 一本の歯ごとに、根管の通り方は違うので岡野歯科医院ではキセノンランプという非常に明るい光源を備えた根管治療専用のマイクロスコープを使用しています。そうすることで、複雑な根管に潜むバイ菌を完全に除去します。

この様に、隅々まで根管を殺菌・消毒をすることができて初めて、根管治療の成功率を上げることができるのです。

次に、多少専門的ですが、適切な消毒薬や根管充填時に使うMTAセメントについて説明します。 特に次亜塩素酸とEDTAは必ず根管治療の使う薬剤です。根管治療には、沢山の歯の削りカスが出て、根管を塞いでしまいます。そのため、この削りカスは根管治療時に十分に洗い流せていないこともあるので、顕微鏡で必ずチェックをします。削りカスの残存に気が付かないと、そのまま根管に蓋をしてしまう可能性があるからです。EDTAは、この削りカスを除去しやすくしてくれます。また、MTAセメントは根管充填材として最適で殺菌効果も期待できます。

とても細かな作業だと思いませんか?

患者さんの知らない所で、顕微鏡歯科専門医は、ここまでやっています。

最後に被せ物の話をします。 根管治療後に精度の高い被せ物をすることも、再治療を防ぐためには重要です。 被せ物が適合していないと、歯と歯とのつなぎ目の隙間から、根管にバイ菌が侵入します。それにより再感染させてしまうことが分かっています。

つまり、根管治療の成功率をあげるためには、根管治療のみならず、被せ物の精度も重要であるということです。

Photo.ラバーダム防湿
ラバーダム防湿
Photo.ラバーダム防湿
ラバーダム防湿

5根管治療の成功率を上げるには歯科用顕微鏡が必須です

これらの事から、いかに歯科用顕微鏡が根管治療に必要かが分かっていただけたかと思います。

根管の状態を確認するためにも、複雑な根管の治療にも、精度の高い被せ物をするためにも、全てにおいて歯科用顕微鏡が必要になります。 そして、これらの処置は全て非常に長い治療時間を必要とします。

治療が繊細で見落としを起こさないためにも、為すべきことが増えるので、十分な治療時間(毎回1〜2時間)をとることが何より必要となるのです。 しかし、ここで一つ注意すべき点があります。

歯科用顕微鏡であれば、なんでもいいという事では無いという事です。 歯科用顕微鏡の中には、高倍率で見やすい顕微鏡と、そうでない顕微鏡があるのです。実は、そこでも、治療内容に差が出ます。 歯科用顕微鏡やCTは持っていれば良いということではなく、使いこなせる技術があるか、ということも大事です。 本ブログが、歯を長持ちさせるための一助になれば幸いです。

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