「ブラキシズム」
ブラキシズムとは
咀嚼にかかわる筋肉が異常に緊張し、咀嚼や嚥下、発音などの運動とは関係なく、上下の歯を無意識に擦り合わせたり、食いしばったり、連続的にカチカチと噛み合わせるなどの習癖があります。
これらの習癖は『ブラキシズム』と呼ばれます。
グラインディング:上下の歯を無意識に擦り合わせたりする。いわゆる歯ぎしり。
クレンチング:食いしばり
タッピング:連続的にカチカチと噛み合わせる
さらに、『ブラキシズム』は睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムに分けられます。
睡眠時ブラキシズムとは
睡眠時ブラキシズムには、睡眠中の非自発性のグラインディング(歯ぎしり)やクレンチング(食いしばり)があります。
主に、浅い睡眠時に起こりやすいと言われています。
このような睡眠時ブラキシズムは日によって発生頻度が異なり、起床後しばらく歯の痛みが持続したり、違和感や咀嚼筋の疲労感を感じる場合もあります。
お口の中の症状としては、咬耗(歯のすり減り)、くさび状欠損(歯と歯茎の間の歯質が一部欠けている状態)、頬粘膜圧痕(口腔内の頬部につく噛み合わせの痕)、舌圧痕(舌につく噛み合わせの痕)が見られることがあります。
睡眠時ブラキシズムの主な原因として、ストレスや抗うつ薬の副作用、飲酒、喫煙、睡眠時無呼吸症候群など様々な因子の関与が報告されていますが、これらは個人差もあり原因不明な点も多いです。
覚醒時ブラキシズムとは
覚醒時ブラキシズムは、咀嚼や会話時以外に観察される非機能的な活動のことです。
覚醒時ブラキシズムには日中クレンチングがあります。
日中クレンチングでは強い力による噛み締めが起こります。
また、強い力を伴わない習慣的な咬合接触の上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit)も覚醒時クレンチングに分類されます。
通常、上下の歯は、1日(24時間)の間、食事も含めてわずか20分ほどしか接することはありません。
くちびるは閉じた状態で、上下顎の歯と歯は接触せずにわずかに空隙(安静空隙)があります。
しかし、上下歯列接触癖があると日中に習慣的な咬合接触が認められます。
このような状態はが続くと、顎関節や咀嚼筋などに負担がかかりやすくなり顎関節症の原因となります。また、歯にも過度な力が加わるため、特に歯周病のある方などは咬合性外傷の進行を助長し、歯根破折の原因となることもあります。
ブラキシズムの検査
ブラキシズムの検査はいくつかあります。
まずは、医療者が本人や同居する家族からブラキシズムの有無を問診します。
その他、歯の過度な咬耗、音声・ビデオ・脳波や心電図などを同時に記録するポリソムグラフィーによる検査を行うことがあります。
また、頬部に簡易検査装置を貼付し、ブラキシズムの咬筋筋活動を記録する検査方法などもあります。
ブラキシズムの治療
ブラキシズムの治療方法は対処療法となります。
現在、ブラキシズムを根本的に治す方法はありません。
睡眠時ブラキシズムに対しては、主にスプリント療法があります。
就寝時にマウスピースをはめることで、顎関節や咀嚼筋への負担を軽減し力を分散させます。また、歯を覆うため咬耗(歯のすり減り)を防止することができます。
覚醒時ブラキシズムに対しては、患者さん自身に意識して歯を当てないようにしてもらうよう指導をします。
岡野歯科医院では
ブラキシズムは対処法がは少なく、影響を防ぎにくいのが現状です。
覚醒時ブラキシズムも睡眠時ブラキシズムも、歯や歯周組織、顎関節に対応できない咬合力が、持続的かつ慢性的にかかるため、予想できない多くのトラブルを引き起こします。
これらトラブルの中でも対処が難しいのが『歯根破折』です。
現在、歯根が割れてしまう歯根破折の治療は確立されておらず、抜歯の診断に至ることが多いです。そのため、歯根破折を起こしにくくするためには歯の神経を残すようにすることが重要です。
そして、歯の神経を残すためには、詰め物・被せ物治療後のむし歯の再発を防止する必要があります。すでに大きく歯を削られてしまっている状態からむし歯が再発すると、むし歯は詰め物・被せ物の界面より歯の中に侵入し、歯の神経に辿りつきやすくなります。
それを防止するため重要なのが、歯と詰め物・被せ物のつなぎ目の精度です。
つなぎ目の精度が悪いと、そこに段差や隙間ができることにより歯垢が溜まりむし歯が進行します。つなぎ目の精度が良ければ歯垢の停留は最小限になり、むし歯の再発を抑えやすくなります。残念ながら、自由診療で行うセラミックの詰め物・被せ物も、必ずしも精度が良いとは限らず、むし歯の再発を抑えられると安心しない方が良いでしょう。
当医院では最も厳しい顕微鏡歯科治療の技術審査を受け、ライセンスを取った歯科医師が治療をしています(顕微鏡鏡歯科ネットワークジャパン)。
当院では、歯を長持ちさせるための、詰め物・被せ物の精度を最優先に考えており、精度が低い審美治療はお薦めしていません。精度が低い(適合の悪い)詰め物・被せ物は、適合の良い詰め物・被せ物と比べても、むし歯が再発しやすく歯の寿命をも左右するからです。
対処法の少ないブラキシズムによるトラブルを少なくするには、
②神経を残すためには、むし歯を放置しないこと
③むし歯になってしまった場合には再発させないような詰め物・被せ物をすること
が大切になります。
歯は抜けたら2度と生えてきません。
ご自身の歯に勝るものはないのです。
ですから、当医院では、むし歯治療、歯周病治療、神経の治療全てにおいて、まず歯を残すことを最優先に考え治療を進めています。