根管の数や形態
歯の神経の通り道である根管は、それぞれの歯によって数や形態が異なります。通常、根管の数は前歯が1本、小臼歯が1本から2本、大臼歯が3本から4本です。個々の歯によって根管の形態も異なり、根管は単純な一本の管ではなく葉脈の様に網目状の非常に複雑な構造を呈していたり、大きく湾曲している事もあります。 また根管は、加齢や細菌感染、歯への物理的な刺激などにより根管内に継続的に象牙質が添加され、根管が細くなったり塞がってしまうこともあります。このように、根管の状態は個々の歯で様々であり、この根管の複雑さが根管治療の難易度を左右します。
右記の根管のイラストの赤いところが根管です。根管は個々の歯で異なり、複雑なことがあります。
根管治療とは
むし歯が重症化すると、細菌が歯の神経(歯髄)に入り込み、夜も眠れないほど痛みが出ます。そうなると、歯の神経を取らないといけない状態になります。 細菌によって傷んだ歯の神経を取ることによって痛みを取り除き、根管内の汚染物質をきれいに除去し、歯の神経の通り道である根管を根の先まで蓋をする処置を根管治療といいます。痛みが出るくらいの重症なむし歯でも、根管治療をすることにより再び歯を元通りに使うことができるようになります。このように、根管治療は歯科治療の中でも特に重要な治療の一つなのです。但し、根管治療を疎かにすると、詰め物や被せ物をした後に再び歯が痛んだり、歯茎が膿んで腫れたりすることがあり、せっかく入れた詰め物や被せ物を外して、また根管治療からやり直しをしなければいけなくなります。更に、再根管治療されずに膿が長期にわたって存在していた場合、歯の根の外側にまで細菌感染が広がってしまい、治りにくい膿にかわってしまう(根尖孔外感染を起こす)ことがあり、最悪は抜歯に至ることもあります。このように、根管治療は歯を長く使っていくためにのベースとなるとても大切な治療なのです。
根管治療の種類について
根管治療は、大まかに2つの種類の治療に分けられます。一つは、生きている歯髄が根管の中に存在し、その神経を歯から取り除く処置。この処置を抜髄と言います。もう一つは、生きている歯髄が根管の中に存在せず、細菌感染している根管の汚染を除去する処置です。この処置を感染根管治療と言います。
1抜髄(ばつずい)
抜髄とは、炎症を起こしている歯髄(神経組織や血管、結合組織などが含まれる部分)を根管から全て取り除き、細菌感染や歯髄損傷による炎症が歯根の周りに拡大するのを防ぐために行われる処置です。この処置も根管治療の中の1つです。むし歯や破折などにより歯髄に細菌感染が生じると、歯髄は炎症(歯髄炎)を起こします。歯髄は硬い象牙質にとり囲まれており、歯髄は炎症を起こしても腫れることができません。その結果、腫れることができないかわりに根管内の内圧が上がって歯髄が損傷を受け痛みが発生します。歯髄は、炎症によって強い損傷を受けると元の状態に戻ることができず、歯髄をとり除かなければ痛みが取れない状態になります。そして、 抜髄により歯髄を除去した後は、空洞になった根管を細菌感染しないよう清掃・洗浄し充填物で封鎖して根管治療を完了します(根管充填)。 また、便宜抜髄といって、歯髄が炎症を起こしていなくても、詰め物や被せ物をする都合で抜髄が必要になることもあります。
2感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)
感染根管治療が必要なケースは2つあります。一つは、むし歯や破折(歯に入ったヒビ)などから細菌が歯髄に侵入し歯髄炎を起こしたのち、歯髄が死んでしまい根管全体が細菌感染してしまったケース。もう一つは、既に根管治療が行われているが治療自体が不完全な状態、もしくは根管治療完了後に根管が再感染してしまったケースです。
むし歯や歯の破折などで歯髄炎が起こり歯髄が死んでしまうと、根の先まで細菌感染が及び、歯髄が腐敗し根の周りに炎症を起こして膿んできます。治療としては、根管の中の死んで腐敗している歯髄組織を除去し、細菌感染で汚染された根管を隅々まで殺菌・消毒し、根管治療をすることにより根の周りにできた膿の改善を図ります。
それに対し、過去に行われた根管治療が不完全で根管に感染が残っている、もしくは根管治療完了後に何らかの原因で根管に細菌が再感染してしまい根の周りに膿ができたケースの治療を再根管治療と言います。 再根管治療は、以前行われた根管治療において、根管の殺菌・消毒が不十分まま根管充填をして根管治療を終えてしまったり、根管治療完了後の詰め物・被せ物治療において歯とのつなぎ目の精度が悪く、そこに溜まった歯垢が原因でむし歯が再発し、歯の中に細菌が入り込み根管が再汚染して根の周りに膿ができている時に行われる治療です。
いずれの場合も、根管の中の汚染物質や汚染された根管充填材の徹底的な除去が必要です。ただ、過去に行われた根管治療により根管にレッジと呼ばれる段差ができていていたり、根管が石灰化し塞がっていたりなど、治療器具が根管の中の感染が残っている場所まで届きにくくなっていることも多く、再根管治療は通常の根管治療よりも治療の難易度が高いので、膿の改善には熟練を要します。
根管治療が必要なケース
根管治療が必要になるケースはいくつかあります。 以下は、一般的な根管治療が検討されるケースです。
むし歯による歯髄の炎症
むし歯が原因で歯髄に細菌感染し、炎症を起こすことによって歯髄が強く損傷されると強い痛みを発し、もう通常のむし歯治療では対処できず、抜髄と呼ばれる損傷した歯髄を除去する根管治療が必要になります。
歯髄壊死・歯髄壊疽
外傷や矯正治療、歯髄炎による局所の循環障害が原因で歯髄組織が壊死(細胞が死んでしまっている状態)している場合や壊死した歯髄組織が腐敗菌に感染し歯髄壊疽を起こしている場合に根管治療が必要となります。
物理的刺激による歯髄の損傷
外傷など物理的あるいは熱刺激などが原因で歯髄が損傷を受けると、歯髄に炎症が起こり、痛みが生じたり歯髄が壊死してしまうことがあります。この場合も状況をよく精査し、必要に応じて根管治療を行います。
根尖性病変
根管への細菌感染により、歯根の周りに炎症を起こし膿などの根尖性病変がある場合、根管治療が必要になります。 根管治療により根尖病変の改善を図りますが、非外科的歯内療法で治らない場合は、外科的歯内療法を行います。
根管治療の流れ
むし歯の除去と隔壁作成
01
むし歯が残っていると、そこから根管に細菌感染してしまう可能性がありますので、完全にむし歯を除去し、除去による欠損を隔壁を作成して補填しラバーダム防湿が設置できる状態にします。
ラバーダム防湿
02
ラバーダム防湿をすることにより、根管治療中の根管への唾液などの侵入による細菌感染を防ぎます。また、ラバーダム防湿をすることにより、根管からの歯肉への薬剤の漏洩も防げるため、次亜塩素酸などの適切な消毒剤を安心して使うことができるようになります。
根管内の汚染物質の除去
03
CT画像を参考にしながら、治療用顕微鏡を使って、ファイルなどの根管治療専用の器具を用い、根管の中の歯髄や腐敗した歯髄の取り残し、細菌感染で汚染された根管充填材などの汚染物質を完全に除去します。
根管の洗浄
04
さらに、消毒の薬剤で根管を隅々まで洗浄し、根管を殺菌・消毒し、さらに綺麗な状態にします。
根管充填
05
根管を根の先まで封鎖する根管充填を行います。適切な根管充填により、細菌が根管の中で繁殖することがもうできなくなります。根管充填後は、通常3〜6ヶ月の経過観察に入ります。
被せ物治療
06
CTスキャンにて根管治療の経過が良好なのを確認したのち、被せ物治療を行い治療を完了します。
根管治療は、歯科治療のなかでも特に難しい治療の一つ
根管治療はなぜ失敗が多いのか
根管治療は細菌感染によって痛んだ神経を取り、根管内の汚染物質をきれいに取り除いたうえで、歯の神経の通り道に蓋をする治療です。前にも述べた通り、歯の土台に関わる治療であり、歯を長く快適に使うためにとても大事な治療です。
しかし、時に根管治療が上手くいかない事があります。
根管治療を行ったのにもかかわらず、治療後に痛みや腫れが再発することがあるのです。根管治療で神経をとっているのに何故だろう?と思われるかもしれません。それは、根管のどこかに取りきれなかった神経が残り腐敗していることがあるからです。
治療直後には痛みや歯茎の腫れが無かったたとしても、根管の殺菌や消毒が不十分だと、実際には根管に細菌に汚染された感染源が残ってしまいます。これらが原因で、歯根の周りに炎症が起こり、再び痛んだり、歯茎が膿んで腫れたりするのです。
根管治療は術者の経験と技量に結果が左右される
根管治療は、なぜ治らないのかというと、根管治療が成功するよう、なすべきことができていないからです。
例えば、
- 根管の中が見えておらず、感染が根管内に残してしまっているのに気づいていない。→CTで根管の走行を事前に確認できていない。根管内を高倍率で顕微鏡で見ながら治療していない。
- 根管治療中の根管への細菌感染の防御が行われていない。→根管治療中にラバーダム防湿をしていない。
- 根管治療後の根管への細菌感染の防御が行われていない。→根管治療後に適合性の良い詰め物・被せ物がされていない。
等が挙げられます。いずれも、術者がどういう治療をするかの影響が出やすい治療なのです。
根管治療は一回目(初回)の治療が実は重要
一回目の根管治療が上手くいかなかった場合、せっかく入れた被せ物を壊して外し、根管治療をまたやり直さなければなりません(これを、再根管治療といいます)。そして、何度も再根管治療を繰り返しても上手くいかずに、結局、痛みや歯茎の膿や腫れがいつまでもとれない可能性もあります。
再根管治療は、回数を繰り返すたびに、実は初回の根管治療より治す条件が悪くなります。
根管治療は『ダメならやり直せばいいと安易に考えない方が良い』のです。つまり何度も根管治療を繰り返しても膿が治らず悩ませられるようになることも多いので、根管治療はできれば条件の良く治りやすい最初の一回目で成功させることが重要です。
根管治療は、広く行われている治療ですが歯科医院の得手不得手が出やすい治療です。
低い、日本の根管治療の成功率
興味深いデータがあります。
以下は、東京医科歯科大学の歯内療法学講座(歯の神経の治療の講座)のデータで、東京医科歯科大学むし歯外来での根管治療のX線(レントゲン)透過像調査(神経の治療の失敗率)のグラフです。根管処置歯における根尖部X線透過像の発現率とは、根管治療した後の根の先の膿の発現率のことです。
▲根管治療のX線(レントゲン)透過像調査(神経の治療の失敗率)のグラフ
根管治療後に根の先に膿があるという事は、根管治療をしたのに治っていないという状況です。
上記のデータでは、50〜70%の症例で膿が確認されています。
このデータから、日本における根管治療の成功率は30〜50%程度であるということが分かります。
それに対しアメリカでの根管治療の成功率※は90〜95%と言われています。
かなりショッキングな数値ではないでしょうか?
しかし、残念ながらこれが現実なのです。
根管治療の成功率を上げるために必要なこと
根管治療の成功率を上げるためには、以下の条件を最低限満たして治療することが必要なのです。
(詳しくは「日本における根管治療の成功率について」のページを御覧ください。詳しく解説しています。)
- 根管内を拡大視できる治療用顕微鏡を使用すること。
- 唾液に含まれる細菌を根管に入れこまないためにも、ラバーダム防湿を行うこと。
- CTによる根管の三次元的な解析をすること。
- 根管治療に必要な時間を十分にとること。
- 根管への再感染を防ぐため、根管治療後に精度の高い被せ物をいれること。
根管治療の成功率※を上げるために、当院では上記の1〜5について、全て治療に取り入れています。また、成功率を上げる要因としては、歯科医師の治療技術や経験も大きく影響します。
では、当院で行っている根管治療について、以下に詳しく説明したいと思います。
岡野歯科医院の根管治療
1十分な治療時間を確保しています
岡野歯科医院では、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いて根管内を30倍まで拡大して見ることで、複雑な根管の内部をはっきり見ながら根管治療を行います。肉眼や拡大鏡(ルーペ)での治療で行われる、手指の感覚や勘(かん)に頼る治療ではなく、顕微鏡を使い目視で根管の状況を確認しながら、確実に根管治療を進めていきます。
顕微鏡を使った根管治療は、肉眼や拡大鏡(ルーペ)では見えない状況が見え、根管内の感染物質の取り残しや枝分かれした細い根管の見落としなどが減るので、治療の成功率が上がります。
但し、治療の不備が良く見えるようになるので、なすべき治療工程が増えるため、肉眼や拡大鏡(ルーペ)による治療に比べて治療時間は格段にかかります。
元々、保険治療で行う根管治療は、全ての工程で歯科用顕微鏡を使う事を前提にしていません。
そのため、保険治療下では必要な治療時間をとることはできないのが現状です。
どんな名医であっても、急いで治療をすればミスも増えます。1回の治療で十分な治療時間をとり、余裕をもって治療することが、成功率を上げるためには必要な事なのです。 十分な治療時間を確保することは、患者さんのために最もやらなければならない事と考えています。
当医院では、1日の治療人数を制限し、お一人につき1〜2時間の治療時間を確保しています。
2マイクロスコープを使用します
根管治療(歯の神経の治療)の成否は、いかに根管を清潔な状態にできたかにかかっています。
そのため、当院では根管治療におけるすべての工程で、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いて治療を行います。
特に、高度な技術を要する歯の神経の治療のやりなおし(以下、再根管治療)は、慎重に治療を行う必要があります。再根管治療では、根管につめてある材料(根管充填材)の残骸に阻まれ、根管の中で繁殖している細菌の除去は困難を極めます。
当院では、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用し、根管の中を30倍まで拡大視しながら治療することで、根管の中の汚染物質を取り残しのないようにきれいに除去し、細菌感染を根管から徹底的に取り除くことにより治療の成功率を上げています。
歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)で細部を確認しながら治療をすると、見落とされていた未治療の根管を見つけたり、過去に治療した際に折れ込んだと思われる器具の破片(破折ファイル)などを見つけることもあります。取り残した汚染物質や、不完全な根管治療、取り残された器具の破片などを根管内にそのままにしておくと、後から痛みが発生したり膿ができる原因になる可能性があるので、当医院では根管内を最大倍率で見続けながら注意深く治療していきます。
3必ずラバーダム防湿を行います
当院では、根管治療時に唾液から根管への細菌感染を防止するため、必ずラバーダム防湿を行います。
また、再感染を防ぐためにも、根管治療で使うファイルと言う器具も患者さん毎に滅菌された新しい器具を使います。
唾液中には、たくさんの細菌がいます。
ラバーダム防湿など、清潔な環境で治療しなければ、さらに、根管内に細菌を押し込みかねません。
詳しくは、ラバーダム防湿のページをご覧ください。ラバーダム防湿
4CTを用いて診断します
人の歯の根管(歯の神経の通り道)は一本の単純な管ではなく、歯根の中で複雑に枝分かれしたり、色々な方向へ湾曲していたりします。また、石灰沈着があると、マイクロスコープで見ても見えない位に根管が細くなっていたり、完全に根管が塞がっていたりします。
このように、根管治療は根管の状況によって困難を極めることも多く、根管の中に入り込んだ細菌を除去できずに根尖病変(根の周りの膿)が治らない事も多いのです。
実は、レントゲン写真では、正しい根管の形や根の周りにある膿の有無すら判断するのは難しいことが多々あり、立体的に歯根や根管の形態を把握したり、根尖病巣の有無や大きさを正確に判断するためには、CT画像による診断無しには不可能と言っても過言ではありません。
当医院では、全ての根管治療(歯の神経の治療)で、最新のCTスキャンにより根尖病巣や根管形態を確認してから治療することで、根管治療の成功率※を高めています。
下の画像は初診時の、レントゲン(左)とCTスキャン(右)画像です。
レントゲンは一方向から写すため、被写体が重なって肝心なところが視えにくくなってしまう事も多いのですが、CTは一つの歯に対し、見たい部分を3方向から3次元的に詳しく視ることができます。レントゲン画像と異なり、重なった画像にならないので、それぞれの根の状態をより正確に精査する事ができます。
赤い矢印の先に見える黒い影が根尖病巣です。青い矢印の先に見える白い像は、上から見た歯の神経の通り道の詰め物です。 神経の通り道が三本あるのがわかります。レントゲンでは根管が2本に見えてもCTで確認すると根管が3本あることがはっきりわかります。CT画像では、過去に行われた治療では歯の根の先まで白い神経の詰め物がされていないのがわかります。 また、レントゲンでは見えなかった根尖病巣の影の画像がはっきり確認できます。
当医院では、初診時にCT画像で患部を確認します。そこで、根管充填が根の先まで足りているか、また膿の大きさや根管の形態などの状況を確認してから根管治療を開始しています。
5被せ物の精度(適合性)を高いものにしています
たとえ根管治療が成功したとしても歯と被せ物との間に隙間が開いている(被せ物の精度が悪い)と、その隙間から細菌が歯の中に侵入して、歯の根の周りに膿を作ることが報告されています。これをコロナルリーケージといいます。
下の図は被せ物の精度(適合性)が根管治療の成功率※にどう影響しているかという研究です。 適合とは
クラウンの精度と根管治療の成功率※
根管治療 | 被せ物の精度 | 成功率 |
---|---|---|
良い | 良い | 91.4% |
悪い | 良い | 67.6% |
良い | 悪い | 44.1% |
悪い | 悪い | 18.1% |
(Ray HA.Trope M.Int Endod J;1995 Jan;288(1):12-8)
このデータを以下に解説します。
※根管治療が上手くいっている状態:根の先まできちんと根管充填がされていること
※被せ物の精度が良い状態:歯と被せ物との間に隙間がないこと
1. 根管治療が上手くいっていて、被せ物の精度が良いと根管治療の成功率※が一番高い。
2. 根管治療が上手くいっていても、被せ物の精度が悪い方が、根管治療が不完全で被せ物の精度が良い方より、根管治療の成功率※が低い。
これは、被せ物をかぶせた後で、歯と被せ物との繋ぎめの隙間から細菌が根管に入り込んでコロナルリーケージを起こしている状態であると考えられます。
現在、ファイバーコアという樹脂(コンポジットレジン)を使用した土台作りが主要になってきていますが、コンポジットレジンは硬化時の収縮量が大きく、ダイレクトにコンポジットレジンで土台作りをした場合、コンポジットレジンの収縮により歯根との間の接着が剥がれ、隙間ができやすい事が指摘されるようになってきています。それにより、ファイバーコアは細菌の侵入を完全に阻止できないことが考えられるのです。要するに、コンポジットレジンで土台を作った場合は、歯との間に隙間ができてしまい、根管に細菌が侵入し、再感染する可能性があるということです。
また、根管治療で殺菌・消毒が終わった根管を歯根の先まで封鎖する事を根管充填と言います。
根管充填で一般的に使われている根管充填材(根管の詰め物)は、根管を蓋する材料にも関わらず、根管充填後に再び根管に入り込んできた細菌を完全に阻止することがでできません。そのため、綺麗に清掃したはずの根管が入り込んできた細菌によって再汚染してしまう危険があります。これらを防止するためには、徹底して根管治療後の再感染を防ぐ事が必要になります。
そのためには、被せ物と歯のつなぎ目をピッタリ合わせ、入り口から細菌の侵入を防ぐしかありません。
根管治療の成功率※を上げるためには、根管治療を終わらせた後の被せ物は、歯と被せ物との繋ぎめから細菌が入り込まなうように最大限の精度が必要なのです。詰め物や被せ物がいかに歯にピッタリ合っているかを適合性といいます。適合性について更に詳しく
当医院では、根管治療を終えた後の被せ物は、顕微鏡下で治療することにより根管に再感染させないよう、世界のトップレベルの精度で歯と被せ物の繋ぎめをフィットさせています。
6破折ファイルを確実に除去しています
根管治療では『ファイル』という細い針のような器具を使用して根管内の治療をします。
このファイルは金属でできており、まれに根管の中で折れてしまうことがあります。
折れた破片が残ったまま、根管を封鎖してしまうこともあり、折れ込んだファイルが原因で、そこから先の根管内の治療ができずに根管に汚染物質がのこり、それが原因で化膿や痛みを起こすこともあります。
この場合は、根管内に折れ込んで根管を塞いでいるファイルを除去し、根の先まで殺菌・消毒し直す必要があります。
しかし、根管内は狭く暗くいため、肉眼や拡大鏡(ルーペ)で破折したファイルを見つけ除去することは困難です。 当院ではCTスキャンで破折ファイルの位置や長さなど状況を詳しく把握したうえで、根管内をマイクロスコープで拡大視して治療し、破折ファイル除去の成功率の高めています。
破切ファイル除去の動画
7パーフォレーシヨンリペア(穿孔の封鎖)を行います
根管から根の壁を突き抜けて穴があいている状態をパーフォレーションといいます。 パーフォレーションを起こすと、穿孔部(根の壁を突き抜けて穴が開いている部分)から細菌が入り込み、歯茎が化膿したり腫れたりすることがあります。 そのため、穿孔部を適切に封鎖できなければ、歯を使っていくことができないため抜歯になってしまいます。
穿孔部は歯茎と交通しており、穿孔部から根管の中に肉芽が入り込んでいたり、出血していることも多いので、穿孔部の確実な封鎖は困難を極めます。
当院では、穿孔部をマイクロスコープで確認し、入り込んでいる肉芽の除去や止血を確認しながら、MTAセメント(封鎖の材料として最適といわれています)を用いて確実に封鎖します。
岡野歯科医院で行ったパーフォレーションリペアの実際の動画
8最適な材料での根管充填
根管治療の最終段階で使用する根管充填材や充填方法は、現在、根管充填材として最も適しているMTAセメントを使用しています。 根管充填材とは、根管充填を行う際に根管内を緊密に封鎖するために使用される材料のことです。いろいろな種類があり、保険治療ではガッタパーチャという天然ゴム(樹脂)性のものが最も多く使用されています。 しかし、当医院ではMTAセメントを使用しています。
一般的に使われているガッタパーチャは歯との接着性が無く、コア(土台)を作る時に、ガッタパーチャがめくれたり、外れてきてしまうことがあります。 それに対してMTAセメントは歯との接着性があるため、めくれたり、外れてくることはありません。剥がれたりすれば、そこから感染することも考えられますので、当医院では土台作成時の感染リスクを極力低くするため、MTAセメントで根管充填をしています。 ガッタパーチャは、根管充填後にひとたび細菌感染すると、細菌の侵入を阻止することができず、根管の先まで細菌が入り込むことができます。また、根管に細菌感染があると、ガッタパーチャーの周りで細菌がはびこりやすいこともわかっています。 MTAセメントはガッタパーチャとは違い、根管充填後も強アルカリを保ち、根管内を殺菌し続けてくれます。 また、生体親和性が高いこともMTAセメントの特徴の一つです。歯の根からMTAセメントが飛び出していてもガッタパーチャとは違い異物反応が起きにくいので根管治療の成功率※が上がります。 当医院のブログでも何度も根管治療時の再感染については触れています。
9治療の可視化
根管内の状況を少しでも正確に把握し、適切な治療を行うことにより、抜歯と宣告された歯でも残すことが可能になるかもしれません。 肉眼やルーペでは対応できない問題も、顕微鏡治療により解決できることも多いです。 顕微鏡(マイクロスコープ)を使用した根管治療は、手探りや勘ではなく、確実に目視で確認しながら治療します。そのためには、マイクロスコープ用に考案された治療器具や治療方法が必要となり、マイクロスコープや専用の治療器具を使いこなす治療技術も欠かすことはできません。 以上のように、岡野歯科医院では根管治療の成功率※の上げるために、様々な努力を行っています。また、マイクロスコープにはCCDカメラが備わっており、顕微鏡を通して治療過程をHDDに記録し、毎回治療後にモニターで治療の動画を再生しながらその日に行った治療や根管の状態をわかりやすく説明しています。 きちんと、マイクロスコープを使い、さらに高倍率で視認しながら治療しているかは、治療後に動画を再生して患部を拡大して見せながら説明できるかが証拠になるのです。 当医院の医院長が認定を受けている顕微鏡歯科ネットワークジャパンでは、治療後に動画での説明を義務づけています。 マイクロスコープは正しく使えば、歯科治療において非常に効果の高い治療機材です。顕微鏡歯科治療は、間違いのない顕微鏡治療を行っている歯科医院で治療を受けることをお勧めします。
料金表
カウンセリング | (内容) ・顕微鏡による、むし歯・歯周病審査など ・レントゲン撮影 | ¥11,000 |
---|---|---|
精密根管治療 | 前歯 | ¥132,000〜 |
小臼歯 | ¥154,000〜 | |
大臼歯 | ¥176,000〜 |
※CT撮影は別途 33,000円がかかります。(※初回のみ11,000円で撮影します) ※詰め物・被せ物除去は別途費用が掛かります。 ※各種クレジットカードでお支払いいただけます。 「根管治療の成功率」データ根拠