根管治療とは
むし歯が重症化すると、バイ菌が歯の神経に入り込み、夜も眠れないほど痛みが出ます。そうなると、歯の神経を取らないといけない状態になります。
バイ菌によって痛んだ神経を取ることによって痛みを除去し、根管内の汚染物質をきれいに取り除き、歯の神経の通り道にふたをすることを根管治療といいます。
根管治療は、歯を長期間快適に使うのに基礎となる非常に大切な治療です。 根管治療をおろそかにすると、後で再び痛んだり腫れたりすることもあり、せっかく入れた被せ物や詰め物を壊して再根管治療をしなければなりません。
しかし、神経の通り道である根管は、非常に細く暗く、また網目のように複雑に分岐していることもしばしばです。
肉眼やルーペで複雑な根管に対応するのはとても難しく、どうしても経験とカンによって治療をせざるをえなくなります。
根管治療の成否は、いかにきれいに神経組織を取り、根管内を消毒できるかにかかっているのですが、根管の形状は一様ではなく、とても複雑で肉眼ではこのような複雑な根管の状況を確認するのは難しく、神経の取り残しの確認は不可能であり、根管治療の成功率※が上がらない原因の一つです。
日本の根管治療の失敗率は、50〜70%
実は、知っておいていただきたい重要なデータがあります。日本の根管治療の成功率※の低さについてです。
以下は、東京医科歯科大学の歯内療法学講座(歯の神経の治療の講座)のデータで、2005年9月〜2006年12月東京医科歯科大学むし歯外来での根管治療のX線(レントゲン)透過像調査(神経の治療の失敗率)のグラフです。
根管処置歯における根尖部X線透過像の発現率とは、根管治療した後の根の膿の発現率のことです。
根に膿を持っているという事は、根管治療をしたのに治っていないという事です。 上記のデータから日本の根管治療の失敗率は、50〜70%、逆に成功率は30〜50%と思われます。かなりショッキングな数値ではないでしょうか?
しかし、残念ながらこれが現実なのです。
それに対しアメリカでの根管治療の成功率※は90〜95%と言われています。
この差はどこから来ているのでしょうか? 根管治療の成功率※の違いは、以下の5つのポイントに集約されます。
- 根管内を拡大視できる治療用顕微鏡を使用しているか
- 唾液からバイ菌を入れこまないラバーダム防湿の施術をしているか
- CTによる根管の三次元的な解析をしているか
- 根管治療に必要な時間を十分にとっているか
- 根管への再感染を防ぐため、治療後に精度の高い被せ物を入れているか
根管治療を成功させるための道筋
根管治療の成功率※をあげるために、当院では上記の全てを行っています。
岡野歯科医院の根管治療
1十分な治療時間の確保
岡野歯科医院では、顕微鏡(マイクロスコープ)を用い、根管内を30倍まで拡大して見ることで、複雑な根管の内部まではっきり見ることができ、勘(かん)ではなく、状況を確認しながら、確実に治療を進めていきます。
ゆえに、顕微鏡治療では、肉眼やルーペでは見えない状況が見えてくるため、なすべき治療が増えます。
それにより治療の成功率もあがるのですが、肉眼やルーペによる治療に比べて治療時間は格段にかかります。
元々保険治療では全ての根管治療に顕微鏡を使う事を前提にしていませんので、保険治療ではなおさら必要な治療時間をとれません。 どんな名人でも急いで治療すればミスも増えるでしょうし、十分な治療時間をとり、余裕をもって治療することが、成功率を上げるためには必要な事なのです。
十分な治療時間を確保することは、患者さんの為に最もしなければならない事と考えています。
2マイクロスコープ
顕微鏡(マイクロスコープ)を用い、根管内を30倍まで拡大して見ることで、複雑な根管の内部まではっきり見ることができ、勘(かん)ではなく、状況を確認しながら、確実に治療を進めていきます。
特に、高度な技術を要する、歯の神経の治療のやりなおし(再根管治療)は、慎重に治療を行います。
根管治療のやり直しは、古いふたの材料の残骸(汚染物質)に阻まれ、根管の中で繁殖しているバイ菌の除去は困難を極めます。
岡野歯科医院では、顕微鏡(マイクロスコープ)を使用し、30倍まで拡大して治療するため、この汚染物質を取り残しのないようにきれいに除去し、治療の成功率を上げています。
顕微鏡(マイクロスコープ)で細部を確認しながら治療をすることによって、未治療の根管を見つけたり、前に治療をした際に折れ込んだと思われる器具の破片を見つけることもあります。
取り残した汚染物質や、不完全な根管治療、そして器具の破片などは、後に痛みの原因になることがありますので、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)で根管内を最大倍率で見続けながら注意深く治療していきます。
また、再感染を防ぐためのラバーダム防湿や完全滅菌された器具を使用することも根管治療の際、とても大切になってきます。
お口の中の唾液中には、たくさんの細菌がいます。清潔な環境で治療しなければ、さらに、根管内にバイ菌を押し込みかねません。
3ラバーダム防湿
唾液からの根管への細菌感染を防止するため、当医院では根管治療時に、必ずラバーダム防湿をしています。
詳しくは、ラバーダム防湿のページをご覧ください。
ラバーダム防湿
4CTの重要性
根管治療(歯の神経の治療)時に、ラバーダム防湿や滅菌された機材を使うなど、感染に対して配慮をするのは当然ですが、根管(歯の神経の通り道)は歯根の中で複雑に枝分かれしたり、色々な方向へ湾曲していたり、石灰沈着により根管がマイクロスコープで見ても見えない位細く、または石灰沈着により完全に根管が塞がっていたりと、根管治療は困難を極めることが多く、根管の中に入り込んだ細菌を除去できずに根尖病巣(根の周りの膿)が治らない事も多いのです。
レントゲン写真では、正しい根管形態や病巣の有無すら判断するのは難しく、立体的に歯根や根管の形態、根尖病巣の有無や大きさを精確に判断し根管を隅々まで殺菌消毒する為には、もはやCTによる診断無しには不可能と言っても過言ではありません。
当医院は、全ての根管治療(歯の神経の治療)に最新のCTを導入し、根管治療の成功率※を高めています。
下の画像は、左側はレントゲン、右側は同じ歯をCTで撮影したものです。
レントゲンは一方向から写すので、被写体が重なって視えにくくなってしまう事も多いのですが、CTは一つの歯の更に一部を三方向から詳しく視ることができます。重なった画像にならないので、それぞれの根の状態をより正確に精査する事ができます。
赤い矢印の先に見える黒い影が根尖病巣です。青い矢印の先に見える白い像は、上から見た歯の神経の通り道の蓋です。
神経の通り道が三本あるのがわかります。レントゲンでは根管が2本に見えてもCTで確認すると根管が3本あることがはっきりわかります。CT画像からは歯の根の先まで白い神経の蓋がされていないのがわかります。
また、根先病巣の影の画像がはっきり確認できます。
5被せ物の精度(適合)
根管治療が成功したとしても歯と被せ物との間に隙間が開いている(被せ物の精度が悪い)と、その隙間から細菌が歯の中に侵入して根の先に到達し歯の根の周りに膿を作ることが報告されています。
下の図は、被せ物の精度が根管治療の成功率※にどう影響しているかという研究です。
適合とは
クラウンの精度と根管治療の成功率※
根管治療 | 被せ物の精度 | 成功率 |
---|---|---|
良い | 良い | 91.4% |
悪い | 良い | 67.6% |
良い | 悪い | 44.1% |
悪い | 悪い | 18.1% |
(Ray HA.Trope M.Int Endod J;1995 Jan;288(1):12-8)

根管治療が良く被せ物の精度が良いと根管治療の成功率※が一番高いのはうなずけますが、根管治療が良く被せ物の精度が悪い方が、根管治療が悪く被せ物の精度が良い方より根管治療の成功率※が低くなってしまっています。
これは被せた後に、歯と被せ物との繋ぎめの隙間から細菌が根管に入り込んできている事が考えられるのです。
根管治療の成功率※を上げるためには、根管治療を終わらせた後の被せ物も、最大限の精度が必要なのです。
当医院では、根管治療を終えた後の被せ物も根管に再感染させないために、トップレベルの精度で歯と被せ物の繋ぎ目をフィットさせます。
6破折ファイル除去
根管治療ではファイルという細い針のような器具を使用し、根管内の治療をします。
このファイルは金属でできていて根管の中で折れてしまうことがあります。折れた破片が残ったまま、根管を封鎖してしまうこともあり、折れ込んだファイルが原因で化膿や痛みを起こしている場合は、折れたファイルを根管から除去し、根の先まで消毒し直す必要があります。
しかしながら、根管内は狭く暗く肉眼で破折したファイルを見つけることは困難です。
岡野歯科医院では根管内をマイクロスコープで拡大して治療しますので、ファイル除去の成功率の高めることができます。
破切ファイル除去の動画
7パーフォレーシヨンリペア(穿孔の封鎖)
矢印の先の赤いところのように、根管から根の壁を突き抜けて穴があいている状態をパーフォレーションといいます。
穿孔部(根の壁を突き抜けて穴が開いている部分)からバイ菌が入り込むことによって、化膿したり腫れたりすることがあります。
穿孔部を適切に封鎖できなければ、歯を使っていくことができずに抜歯になります。 穿孔部は歯茎と交通しているため、肉芽が入り込んでいたり、出血していることも多いので、穿孔部の確実な封鎖は困難を極めます。
岡野歯科医院では、穿孔部をマイクロスコープで確認し、入り込んでいる肉芽の除去や止血を確認しながら、MTAセメント(封鎖の材料として最適といわれています)を用いて確実に封鎖します。
岡野歯科医院で行ったパーフォレーションリペアの実際の動画
8最適材料での根管充填
根管治療の最終段階で使用する根管充填材や充填方法は、現在、根管充填材として最も適しているMTAセメントを使用しています。
根管充填材とは、根管充填を行う際に根管内を緊密に封鎖するために使用される材料のことです。いろいろな種類があり、保険治療ではガッタパーチャという天然ゴム(樹脂)性のものが最も多く使用されています。
しかし、当医院ではMTAセメントを使用しています。
一般的に使われているガッタパーチャは歯との接着性が無く、コア(土台)を建てる時に、ガッタパーチャがめくれたり、外れてきてしまうことがあります。
それに対してMTAセメントは歯との接着性があるため、めくれたり、外れてくることはありません。剥がれたりすれば、そこから感染することも考えられますので、当医院では土台作成時の感染リスクを極力低くするため、MTAセメントで根管充填をしています。
また、ガッタパーチャはひとたび細菌感染すると、その周りで細菌がはびこりやすいこともわかってきています。
MTAセメントはガッタパーチャとは違い、根管充填後も強アルカリを保ち、根管内を殺菌し続けてくれます。
また、生体親和性が高いこともMTAセメントの特徴の一つです。歯の根からMTAセメントが飛び出していてもガッタパーチャとは違い異物反応が起きにくいので根管治療の成功率※が上がります。
当医院のブログでも何度も根管治療時の再感染については触れています。
9治療の可視化
根管内の状況を少しでも正確に把握し、適切な治療を行うことにより、抜歯と宣告された歯でも残すことが可能になるかもしれません。
肉眼やルーペでは対応できない問題も、顕微鏡治療により解決できることも多いです。
顕微鏡(マイクロスコープ)を使用した根管治療は、手探りや勘ではなく、確実に目で確認しながら治療するため、マイクロスコープ用に考案された治療器具や治療方法が必要となり、マイクロスコープや専用の治療器具を使いこなす治療技術も欠かすことはできません。
以上のように、岡野歯科医院では根管治療の成功率※の上げるために、様々な努力を行っています。また、マイクロスコープにはCCDカメラが備わっており、顕微鏡を通して治療過程をHDDに記録し、毎回治療後にモニターで治療の動画を再生しながらその日に行った治療や根管の状態をわかりやすく説明しています。
きちんと、マイクロスコープを使って治療しているかは、治療後に動画を再生して説明できるかが証拠になるのです。
当医院の医院長が認定を受けている顕微鏡歯科ネットワークジャパンでは、治療後の動画での説明を義務づけています。
マイクロスコープは正しく使えば、非常に効果の高い治療方法です。間違いない顕微鏡歯科治療を行っている歯科医院で治療を受けることをお勧めします。
料金表
カウンセリング | (内容) ・顕微鏡による、むし歯・歯周病審査など ・レントゲン撮影 | ¥11,000 |
---|---|---|
精密根管治療 | 前歯 | ¥132,000〜 |
小臼歯 | ¥154,000〜 | |
大臼歯 | ¥176,000〜 |
※CT撮影は別途 33,000円がかかります。(※初回のみ11,000円で撮影します)
※詰め物・被せ物除去は別途費用が掛かります。
※各種クレジットカードでお支払いいただけます。