記事概要
歯周病は、歯の抜歯の原因のナンバーワン。60代近辺では歯周病が歯を抜く原因の50%以上を占めてしまいます。歯周病は歯の支えが悪くなる病気です。ここでは歯周病の主な原因と、それにまつわる8つの修飾因子についてと、歯周病を予防・改善するための5つのポイントを解説いたします。
1歯周病の主な原因と修飾因子 8つ
歯周病は、歯の抜歯の原因のナンバーワンです。
歯周病による抜歯は40代前半から増え始め、60代近辺でピークを迎えます。そのため、60代近辺では歯周病が歯を抜く原因の50%以上を占めてしまいます。
これは、逆に言えば、40歳からの歯周病ケアが上手くいけば、抜歯で歯を失う確率が下がるという事を示しています。
歯周病は歯の支えが悪くなる病気です。具体的には歯を支える歯槽骨が溶けてなくなってしまい、その結果、歯をしっかり支えられなくなり、歯がグラグラになって上手く噛めなくなり抜歯になってしまう病気です。
ここでは歯周病の主な原因と、それにまつわる8つの修飾因子についてお話をしていきたいと思います。
因子1:歯垢
お口の中には500種類程度の細菌がいると言われています。これらの細菌がお口の中で繁殖した塊を『歯垢』と言います。その歯垢の中の歯周病菌が歯周病を進行させる毒素を出してきます。この歯周病菌が、歯周病の主な原因です。歯垢がブラッシングで上手く落とせていないと歯周病が進行します。
因子2:歯石
歯の周りに付いてくる歯石は、表面がザラザラしています。ザラザラした歯石の表面は歯周病菌が付着して繁殖するには最適の場所であり、歯垢が増えやすく、また歯石が付いていると歯ブラシやフロスで歯垢を落としにくくなります。
因子3:歯ぎしり
昼間の歯ぎしりと就寝時の歯ぎしりがあります。歯ぎしりは歯周病組織に慢性的な負担をかけ、歯周病の進行を加速させます。歯ぎしりをする人の6割以上が歯周病を併発していると言われています。
因子4:喫煙
タバコの煙の中には数千種類の化学物質が含まれ、毛細血管の収縮作用により血流を減少させ、歯周組織への酸素供給の低下を起こします。それによって体の免疫能を低下させ、歯周組織の抵抗性や治療の成功率を低下させます。喫煙者は非喫煙者に比べ、2~3倍歯周病の罹患率が高いと言われています。
因子5:糖尿病などの全身疾患
歯周病は糖尿病の合併症の一つとして考えられています。糖尿病があると、そうでない人に比べて2倍歯周病にかかりやすいと言われています。糖尿病が体の歯周病菌に対する抵抗力を低下させ、歯周組織の破壊が進みやすくなるからです。
因子6:生活習慣とストレス
生活リズムが乱れたりストレスがかかると、歯ブラシなどの口腔清掃がおろそかになり、歯垢が増えてしまうことが考えられます。また、ストレスは口腔乾燥を引き起こし、歯周病菌に対する唾液の抗菌作用や自浄作用を低下させます。
因子7:歯並びと咬み合わせ
歯並びが悪いと歯ブラシが上手くいかずに、歯の周りに歯垢が多く残存してしまい、歯周病が起きやすくなります。また、咬み合わせが悪く、上下の歯が強く当たっている歯も歯周組織に負担がかかり、歯周病が進行しやすくなります
因子8:不適合な詰め物や被せ物が歯に入っている
歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目が隙間なくピッタリ合っている状態を「適合が良い」と言います。逆に、歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目に隙間があったり段差がある状態を「適合が悪い」と言います。「適合が悪い」と繋ぎ目に歯垢が溜まり、歯ブラシやデンタルフロスでも歯垢が上手く落ちずに歯周病やむし歯の原因となります。
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2歯周病を予防・改善するためには
それでは、歯周病にならないために、また改善するためには、どのような対処が必要であるかについて簡単に説明したいと思います。
歯周病は、静かに進行していく病気です。初期症状はあまりなく、痛みや腫れなどの症状が出て気がついた時には重症化してしまっていることが多いです。
そして、歯周病が重症化してしまってからでは、治療の成功率も下がり歯を残すのが非常に難しくなります。ですから、重症化する前の段階で歯周病を見つけて治療をしなければなりません。その為に定期検診を受け、早期発見する事が、とても重要となります。
では、(歯周病の改善が期待できる段階である)初期または中等度の歯周病ではどのような治療を受ける必要があるかについてご説明します。
どの進行段階の歯周病も、基本的に治療の考え方は同じです。ここからは、私が行っている《治療用顕微鏡》を用いた歯周病治療についてお話したいと思います。
① 歯の周りの歯垢(最近の塊)をブラッシングで落とす
まずは、確実に歯垢を落とすブラッシングを身につけることです。これは、ブラッシング指導を繰り返すことで改善します。口腔ケアのために歯ブラシやフロス、歯間ブラシを揃えていても、使い方が間違っていれば何回やっても歯垢は落ちません。
「歯ブラシをかけている」=「歯垢が落ちている」ではないのです。
治療用顕微鏡にはカメラが備えてあり、一本一本の歯を拡大視しながらブラッシングで落ちていない歯垢がどこにどれくらい残っているか、患者さんにヘッドマウントディスプレイ(メガネ型のモニター)を使用して、その場で確認していただけます。また、画像を録画して後からモニターに再生して見ていただくこともできるので、清掃状態の確認に非常に有効です。
治療用顕微鏡を用いると、どの歯のどこに歯垢が残っているか、納得していただきながら、繰り返しブラッシング指導をすることができるので、正確な口腔ケアができるようになります。
また、不適合な詰め物や被せ物は歯垢が溜まりやすく、また歯垢が落ちくくなります。歯垢が溜まりにくくし、歯垢をブラッシングで落としやすくするために、適合性の良い詰め物や被せ物を入れる必要があります。
② 歯石を取る
歯石の表面はザラザラしているため歯周病菌がはびこりやすく、歯石が付いていると歯周病が増悪しやすいのです。また、歯周病が進行してくると、歯槽骨の破壊に伴って歯周ポケットが深くなっていきます。深くなった歯周ポケットの中で歯根の表面に歯石が付いてくると、その歯石を足がかりにしてさらに歯周病菌が繁殖し、歯肉の炎症が進行します。
中等度の歯周病では、初期の歯周病より歯周ポケット内の歯根面に歯石がこびりついていることが多く、歯周病を改善するためには、その歯石をまず確実に除去することが必要です。
しかし、歯周ポケット内は狭く、暗く、深ければ深いほどよく見えなくなります。通常は、歯周ポケット内に付いている歯石は勘を頼りに除去していくのですが、歯根面は凹凸も多く、また歯周ポケット内に付く歯石は黒く固く強固に歯根面に付着しているので、肉眼やルーペでは完全に歯石が取れていないことも多いのです。
歯肉を切り開いて歯根面を露出して歯石を除去する手術もありますが、周りの歯の健康な歯周組織へのダメージもリスクとしてあります。
治療用顕微鏡では、狭く暗い歯周ポケットの中も深いところまでよく見えるので、歯肉を切り開く手術をしなくても歯石の除去が可能なことが多いです。手術をせずに済めば、患者さんの肉体的な負担も軽減されます。
治療用顕微鏡を用いての歯石除去の様子です。よかったらご覧ください。
③ 咬み合わせの負担軽減
歯周病が悪化する原因に、歯ぎしりなどの咬み合わせの負担があります。咬み合わせの負担を「咬合性外傷」と言います。継続的もしくは間欠的に歯周組織に力がかかり、ダメージを与えることにより、歯周組織の炎症を悪化させ歯を支える歯槽骨が吸収していきます。
咬み合わせの負担を減らす対策は、歯ぎしり用のマウスピースを夜間装着する、歯を削って咬み合わせを調整する、歯列矯正で負担のかかりにくい咬み合わせに修正する、被せ物で負担のかかりにくい咬み合わせに作り直す、などの対処をしていきます。
④不正歯列の改善
歯並びが悪いとブラッシングで歯垢を落とすのは困難を極めます。歯磨き指導も限界があり、どうしても上手く歯垢が落とせなところが出てきてしまう事もあります。
歯列矯正により、乱れている歯並びをきれいに並べなおして清掃しやすく歯垢を落としやすい状態にすることで、歯周病を予防・改善します。
⑤喫煙・基礎疾患の改善
歯周病を予防・改善するためには禁煙が必要です。歯周病の悪化のみならず、歯周病治療の反応も妨げてしまいます。禁煙することで歯周病治療の効果が上がることがわかっています。良い治療結果を出すためにも禁煙は必須とご理解ください。
また、糖尿病などの基礎疾患も歯周病の予防・改善に影響する可能性がありますので改善する必要があります。
3まとめ
歯周病は、大きな症状もなく静かに進んできます。繰り返しになりますが、歯周病が重病化する前に発見し、的確な治療を受けることがとても重要です。定期検診で歯周病が進んでくる兆候を察知し、早期に対処することが大切です。
また、前述したとおり、一つの選択肢として、治療用顕微鏡を使用した体に優しく、より改善しやすい最新の治療方法もあります。ぜひ、入れ歯やインプラントのお世話にならないよう、歯周病の管理をしていきましょう!40歳からの歯周病のケアをして、歯周病予防に努めていただきたいと思っています。
最後に、マイクロスコープを使用して歯石除去をしている動画です。よかったらご覧ください。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞