静かに忍び寄る歯周病への対処法!3つのポイント
記事概要
歯を失ってしまう二大原因は、むし歯(う蝕)と歯周病です。特に、歯周病は、抜歯に至ってしまう原因のNo.1の疾患です。どんな(歯周病の)ステージでも、歯周病の治療のベースになるのが歯ブラシ指導です。日常の歯磨き(ブラッシング)で歯垢落としが上手くいっていないと、歯周病の改善は望めません。何故なら、歯周病は、歯垢(プラーク)が原因で歯肉が炎症を起こす病気だからです。当院では、歯周病への対処法として、ブラッシング指導を最重要視しています。皆さんに是非知っていただきたい歯周病治療には何が効果的か、を当医院の専門である顕微鏡歯科ならではの視点でこの記事を書きました。
1歯を失う二大原因は
本コラムをお読みの皆さん。
皆さんは、『歯を失う二大原因』をご存知でしょうか?
これらは、すでに、多くのメディアで取り上げられている事ですし、多くの皆様に周知されていることではありますが、改めて考えていただければと思います。
そうです。歯を失ってしまう二大原因は、むし歯(う蝕)と歯周病です。それでは、むし歯と歯周病、どちらが歯を失う原因として多いのかは知っていますか?
それは、歯周病です。
歯周病、俗に歯槽膿漏(歯槽膿漏とは、歯肉から膿が漏れるという歯周病のひとつの症状のこと)と呼ばれるこの病気は、歯を抜く原因の50%以上を占めます。下記は、歯周病についてお話をしている私の動画です。2分36秒の動画ですので、よかったら先にこちらをご覧ください。
歯周病は、抜歯に至ってしまう原因のNo.1の疾患です。
2歯周病は静かに進行していきます
このように言ってしまうと、歯周病という病気が、とても怖いものに聞こえてしまいます。
実際に歯周病は、怖い病気であることは確かですが、逆に歯周病が治せれば歯を失う事を減らせるという事をご理解いただく必要があります。
しかしながら、いまだ、歯を失う原因のナンバーワンを締めているということは、歯周病治療が上手くいっていないか、もしくは歯周病治療自体がされていないかという事が言えますね。
実は、歯周病の治療は非常に難しいのです。
歯周病は静かに進行していく病気です。進行度(重症度)によって、歯周病の治療法が変わります。
歯周病の初期は、歯ブラシの時に出血があるくらいで、その他にはほとんど自覚症状は出ず、中等度に進行してきても歯が少し揺れたり、見かけ上歯肉が少し落ちたり、水がしみるくらいで、やはり大きな自覚症状はないことが多いです。
ここが厄介なところで、重症化するまでは強い症状が出ないので自分では気づくことができず、ほぼ普通に生活することができます。
しかし、歯肉が膿んで腫れたり痛みを起こして慌てて歯科医院に駆け込んだころには、もう助けることができないほど、歯周病が進行し重症化ていることが多いのです。
一般的に、歯周病の治療は中等度の状態までが限界で、重症化すると治療の成功率は下がり、さらに奥歯に行けば行くほどその成功率は下がります。また歯周病の10%は何をしても治らないと言われています。
3歯周病の大まかな進み方
①歯周ポケットが深くなり、歯の周りの歯肉にバイ菌の巣ができる。
↓
②歯を支える歯槽骨が溶けはじめる。
↓
③膿んで歯肉が腫れたり、歯がグラグラ揺れ始める。
↓
④痛くて上手く噛めなくなって抜歯に至る。
さて、表題にあります三つの対処法は、最後にお伝えしますが、その前に当医院が歯周病治療で大切だと思うことについてお話したいと思います。
4歯ブラシ指導が最も重要です
それでは、ここからは当院が最も重要だと考える、歯周病治療の一つ、歯のブラッシング指導について説明します。
どんな(歯周病の)ステージでも、歯周病の治療のベースになるのが歯ブラシ指導です。
日常の歯磨き(ブラッシング)で歯垢落としが上手くいっていないと、歯周病の改善は望めません。何故なら、歯周病は、歯垢の中にいる歯周病菌が原因で歯肉が炎症を起こす病気だからです。
但し、正しいブラッシングの習得は簡単ではありません。
ご自身で日々正確に歯垢を落とせるようになるためには、歯科医院側の根気が必要なのです。まずは、患者さんに、正確なブラッシングの必要性を理解してもらわなければいけないのと、繰り返しブラッシング指導をうけてもらわなければいけません。その為には、患者さんのモチベーションを高め、それらを維持していかなければなりません。
むし歯の治療がほぼ受け身に対して、歯周病治療はブラッシングなどの主体性、患者さん自らが、自分で治していくという事を理解していただく事が重要です。まずそこが、難しいところなのです。
また、一人ひとりのブラッシングのスキルが違います。
器用な人もいれば、不器用な人もいます。歯並びも違いますし、歯に対する価値観が違えばやる気も違います。これらの事から、歯のブラッシング指導は歯周病の改善には必須にもかかわらず、歯科医院側にとってもハードルが高く、おざなりにされやすいのです。
5歯科医院での歯垢の除去は必要?
ここまで読んできて、そこでもう一つ、疑問に思われる事は無いでしょうか?
『歯医者さんで、定期的に歯垢除去をしてもらえれば、むし歯や歯周病は防げるのでは?』という点です。残念ながら、一般的に行われている歯科医院におけるクリーニング(歯石除去含む)は、その場限りで効果はあまり期待できません。何故なら、その日はきれいになったとしても、ご自身によるブラッシング(歯垢落とし)が上手くいっていなければ、翌日から歯垢は溜まり、歯肉は炎症を起こし始めるからです。
歯周病治療の基本は、ご自身による日々のブラッシング(歯垢落とし)です。
しかし、歯周病治療に最も重要である歯ブラシ指導は、通常時間がかかります。特に保険治療では、歯ブラシ指導にかかった時間に対する対価が、ほとんどありません。よって、なかなか丁寧に指導してもらえないのが現状ではないでしょうか。
当医院では、365日ご自身で歯垢が落とせるよう、歯周治療前にブラッシング指導を必ず時間をかけて行っています。
6歯肉縁下歯石の除去に歯科用顕微鏡が活躍
もう一つ、歯周病治療の難しさについて説明します。歯周病が改善しにくい原因に、歯肉縁下歯石の除去の難しさがあります。歯石は表面がザラザラして細菌が繁殖しやすく、特に歯肉縁下歯石が問題となります。
歯肉縁下歯石は、歯肉縁上歯石と違い、ポケットの中に隠れるのでよく見えません。歯周病が進めば進むほど、ポケットは深くなるので、更に見えなくなり歯石の除去が難しくなり歯石の取り残しが出てきます。歯石が取れていなければ歯周病は改善しません。
また、もろく除去しやすい歯肉縁上歯石と違い、歯肉縁下歯石は固く歯根面に強固に付着しているので除去しにくく、更に取り残しが出てきます。この歯肉縁下歯石を確実にとり、歯周病が改善しやすい状況を作る必要があります。
そこで、当院では歯科用顕微鏡を用います。歯科用顕微鏡はその場で、歯垢の残っている場所や赤く腫れている歯肉の炎症をモニターに映し、動画で見せることができるので、理解しやすく、患者さんのブラッシングの技術とモチュベーションを高め、維持することができます。
また、暗く狭いポケットの中も、顕微鏡は明るく照らし、拡大して見る事ができるので、肉眼やルーペより確実に歯肉縁下についている歯石をとることができ、歯周病を改善しやすくなります。但し、顕微鏡を使っていたとしても、歯石がとれているとは限りません。顕微鏡下での歯石の除去は、熟練した高度な技術が必要です。やはり、歯石をとっているところを動画で撮影し、治療後にモニターに映してきちんと歯石が取れているか説明できる歯科医院をお勧めします。
これらが、歯周病治療において当医院が大切にしている事です。
7歯周病への三つの対処法
それでは最後に、歯周病への対処法についてまとめます。
重症化した段階で見つかっても助からないわけですから、初期、または中等度の状態で歯周病を見つけて治療し、改善された状態を維持するということです。
①初期や中等度の自覚症状を見逃さない
●ブラッシング時の歯肉からの出血
●水がしみる
●歯肉が落ちてきた
●歯が前よりも動く
●噛んだ時の違和感
●歯ぎしりを指摘されたり、自覚がある
これらが気になったら、歯周病がおこっているかもしれません。念の為に早目に歯科医師にチェックしてもらうとよいでしょう。
②歯周病と診断されたら、重症化する前に徹底的に治療する
中等度までの状態でしたら歯周病を改善し進行を止めることができる可能性があります。歯周病は重症化すると治せなくなるので、進行が中等度の段階までに治療を開始すると良いと思います。但し、どの歯科医院でも歯周病の治療ができるとは限りませんので、歯周病治療の得意な医院を受診してください。
③定期的な検診を欠かさない
歯周病は静かに進行します。自覚しにくいからこそ、歯科医師に早く歯周病を見つけてもらうことをお勧めします。早期発見・早期治療は患者さんの経済的、肉体的、精神的、時間的負担を減らします。また、歯に自信があり、今までほとんど歯科医院にかかったことがない方も要注意です。自分では気付かないだけで、もう歯周病が進んでいる可能性があるからです。
歯周病でなくなってしまった歯槽骨は、ほとんど回復しません。
だから、早期に発見・治療する事が重要です。歯周病は、静かに進みます。自分では気づきにくいだけに、検診が重要なのです。ブラッシング指導に時間を割いてくれる歯科医院を選ぶこと、更に可能なら確実に歯石をとってくれる歯科医院にかかることをお勧めします。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞