岡野歯科医院
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お悩み相談

【お悩み相談】Q10.『歯茎が腫れたので、歯医者さんに行ったら膿んでいるので抜歯すると言われました。抜歯しない方法はないのでしょうか。』

記事概要

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。まずは、歯茎が腫れ膿んでいる原因が何かを確かめる必要があります。原因によって、対処が変わるからです。場合によっては、抜歯しなくてすむかもしれません。

1歯茎が腫れて膿んでしまう原因

歯茎が腫れて、急に歯を抜かなければならないと言われたら誰でも不安になると思います。当医院のお悩み相談で、最も多いのが『抜歯』にまつわる相談です。何故歯茎が膿んでいると抜歯になってしまうのか、膿んでいることと抜歯との関係性について説明します。

まずは、歯茎が腫れ膿んでいる原因は何なのか、その理由を確かめる必要があります。

なぜなら、歯茎が腫れた原因によって、その対処法が変わるからです。
場合によっては、抜歯しなくてすむかもしれません。この原因の見極めと診断が非常に重要なポイントになります。

まずは、歯茎(歯肉)が腫れて膿んでしまう原因です。
これはいくつか考えられます。主な理由として下記の5つが考えられます。

<歯茎が腫れる原因>

  • 1.根尖病変(根尖性歯周炎)
  • 2.パーフォレーション(根管壁穿孔)
  • 3.歯周病(辺縁性歯周炎)
  • 4.歯根破折
  • 5.セメント質剝離

それでは、これら5つの原因について以下に解説したいと思います。

2根尖病変(根尖性歯周炎)によるもの

『根尖病変』とは、細菌が歯の根管を経て歯根の周囲組織に到達したことで、周囲組織に炎症を起こしている状態です。
炎症が起きている部分は、細菌を排除するために白血球が集まり歯を支えている歯槽骨を溶かして膿の袋を作ります。
通常は、根管治療(歯内療法)を行うことにより改善をはかりますが、改善しない場合は外科的歯内療法や分割抜歯が必要になることもあります。
膿の原因が、この根尖病変であれば根管治療が重要になります。

正しい根管治療によって、これらの症状が改善されれば抜歯にはなりません。

3パーフォレーション(根管壁穿孔)によるもの

『パーフォレーション(根管壁穿孔)』とは、根管治療において、歯冠に存在する歯の神経を取り除く際に行う髄室開拡や根管の拡大・形成の際に、解剖学的形態や切削器具の特性を考慮せずに誤った方向に切削してしまうことです。

そすると、歯冠部の神経が入っている髄室の側壁や髄床底(髄室の底の部分)、根管壁に穴が開いてしまいます。これがパーフォレーションです。
パフォレーションを起こしたところは、開いた穴に細菌が入り込み、歯根の周りに膿を持つことがあります。

通常は、根管に開いてしまった穴を、材料(MTAセメントなど)で封鎖する治療をしますが、根管のどこに穴が開いているかで予後の良し悪しがかわります。根管に開いている穴の状態にもよりますが、根管治療によって適切に穴が封鎖(パーフォレーションリペア)されれば、骨が形成され抜歯せずにすみます。

4歯周病(辺縁性歯周炎)

『歯周病(辺縁性歯周炎)』は、歯と歯肉の境目にある歯肉溝内に蓄積したプラーク中の細菌によって、歯肉やその周りの組織辺縁部に炎症が起こります。その炎症により、歯肉の発赤・腫脹(腫れ)が生じ、歯周ポケットが形成されます。

歯周ポケットの歯肉に炎症が強いと、ポケット上皮にびらんや潰瘍が形成され、膿の主体成分である好中球が歯周炎の起きている部分に多数浸潤し、歯周ポケットからの排膿がみられるようになります。

また、歯周病が悪化・進行して歯周ポケットが深くなり、プラークや歯石などでポケットの入口が閉鎖してしまうと、より嫌気性が強い状態になります。そのため、嫌気性菌が増えやすくなり、慢性だった歯周炎が急性化し、歯周膿瘍という膿の袋が形成されることがあります。

歯周病が原因で腫れて膿んでいる場合は歯周病が重症化していることが多く、治療を施しても抜歯になる可能性が高く、歯周病は抜歯の原因のNo.1となっています。

歯周病は軽症、または中等度の状態で見つけて、早く治療することが重要です。

5歯根破折

『歯根破折』は打撲などで歯に大きな力が加わったり、歯ぎしりなどの咬合性外傷により、薄くて脆い歯質が残っている歯や根っこに亀裂や破断が生じやすくなって起こります。

破折した歯のヒビを破折線と言います。そのヒビが細菌の感染経路になるので、破折線に沿って歯周ポケットが形成され、入り込んできた細菌が原因で破折の周囲歯肉に炎症が生じ、歯肉膿瘍が形成されることもあります。

破折した歯を長期間放置しておくと、歯根の吸収や膿瘍形成が見られたり、歯の周りの歯槽骨が吸収され、歯の動揺が増すこともあります。

完全に破折した場合は基本的には抜歯が必要です。ただし、破折の入り方によっては、歯を引っ張り出したり、歯肉を手術で下げることで細菌が歯肉の中に溜まりにくくすることができますので、抜歯をせずにすむこともあります。また、上顎大臼歯は歯根が何本かあることが多いので、そのうちの1本のみにヒビが限局していれば、その歯根だけ分割して抜歯し、残りの歯根を使って被せ物をして歯を使っていくことができることがあります。

6セメント質剝離

『セメント質剝離』は、本来歯根の表面についているはずのセメント質が、過度な咬合力などによりセメント質が肥大し剥がれた状態のことを言います。

セメント質が剥離するとその部分の歯肉溝が深くなり、そこに細菌が溜まって炎症を起こして歯肉の腫脹や排膿が起きることがあります。臨床的には垂直性の歯根破折とよく似た症状を示します。

治療としては剥離したセメント質を外科的に除去し、その部分を清潔に保てるように管理していく必要があります。
しかし、予後が悪く腫れや痛みが続く場合は抜歯になってしまう事があります。

7まとめ

歯茎の腫れや膿の原因は様々です。
精密な診断により治療方法が見つかれば、必ずしも抜歯になるとは限らないので諦めないでください。
治療用顕微鏡(マイクロスコープ)とCTスキャン画像などを用いて、適切な検査を行い、正しい診断をすることがとても重要です。

それにより抜歯を免れるかもしれません。
セカンドオピニオンとして、根管治療の経験豊富な医院に相談するのも良いでしょう。

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