2022

2/07

【お悩み相談】Q9.奥歯の再根管治療を行いましたが、結局、膿がたまって抜歯することになりました。貴院では垂直性歯根破折について抜歯しない方法はありますか?

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。

垂直性歯根破折の抜歯

  • お悩み

神経治療後の痛みQ9.奥歯の再根管治療を行いましたが、結局、膿がたまって抜歯することになりました。貴院では垂直性歯根破折について抜歯しない方法はありますか?

回答:直性歯根破折の場合には、一般的には抜歯が選択されます。接着を試みる場合もありますが、リスクもあり予後の保証は出来ないのが現状です。

歯根破折とは歯の根にヒビが入ったり、割れたりしている状態のことで、歯に過度な力がかかることによって起こります。 一般的に、歯根破折が起こると抜歯になる確率が高く、永久歯の抜歯原因の第3位と報告されています。下記の資料を見てみると、抜歯の主原因の1位が歯周病(37.1%)、2位がう蝕(29.2%)、3位が破折(17.8%)であることがわかります。

*参考資料:公益財団法人8020 推進財団:第2回永久歯の抜歯原因調査報告書 . 2018年 11 月 https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/Tooth-extraction_investigation-report- 2nd.pdf

また、スウェーデンでは、口腔衛生状態が良好な集団を対象に、どのような理由で歯が失われていくのかを30年間追跡調査した報告があります。その結果は、むし歯7%、歯周病5% 、歯の破折は62%であったと報告されています。

*参考文献:
Axelsson P, Nyström B, Lindhe J: The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol, 31(9): 749 ~ 757, 2004.

口腔ケアを一生懸命やって、むし歯や歯周病を予防できていたとしても、歯根破折で抜歯になってしまう歯が意外に多いのがわかります。

歯根破折は歯が抜歯に至る、とても大きなリスクの一つなのです。

特に、抜歯につながりやすい破折である垂直性歯根破折は、上顎第一大臼歯の近心頰側根,上顎第一小臼歯, 第二小臼歯,下顎第一大臼歯の近心根に好発するとされています。ご相談いただいた方も臼歯の垂直性歯根破折のようですので、好発部位に合致します。

垂直性歯根破折が進んで歯肉縁下奥深くまで及んでくると、破折のひびにそって細菌が歯肉深くに入り込み、その結果、破折した歯の周りの歯肉が膿んで腫れたり痛みが生じてきます。

一般的には、垂直性歯根破折は抜歯の選択となりますが、破折の大きさや古さ(歯根にヒビが入ったばかりの方が予後が良いと言われています)によっては、当医院では接着治療(割れた部分をくっつける治療)を試みることがあります。

歯根破折は、まずどのように破折しているかを診断しないといけません。破折の角度(水平性か垂直性か)、破折の部位、破折の大きさなどです。歯の外側から観察して破折が分からない時には、詰め物・被せ物・土台を外して内側から破折のヒビを治療用顕微鏡で確認します。それでも破折が確認できない時は、更に神経の通り道の蓋(根管充填材)を除去し破折を確認します。また、歯根破折はCT画像で特徴的な画像が見られることがあり、破折を診断するのにCTを撮影するのは必須です。

水平性・垂直性いずれにしても歯肉深くで歯根破折している場合は、歯を残す接着治療が難しくなります。

歯根破折で、抜歯ではなく歯を残す治療の選択肢をとった場合、破折の接着治療後、一定期間の経過観察を経たのちにCT撮影を行い、歯根の周囲の膿がなくなっ てきていることを確認したら、最終的な被せ物の治療を行なっていきます。

但し、垂直性歯根破折の接着は非常に高度なテクニックが必要で、接着処置をしても症状が改善しないこともあるというリスクを承知の上で治療に進むことになります(経過観察後のCT撮影で破折した場所にできた膿の改善が見られなかった場合は抜歯となります。抜歯の費用が別途かかります)。

また、破折治療の後、被せ物をしても安心はできません。
歯軋りなどの影響で再度破折を起こしてしまう事もあり、その時は、抜歯になってしまうのです。(被せ物の費用は返却されません。)

これらのリスクを承知しただいた上で、破折の接着治療を行っています。

要は、長持ちする可能性もありますが、予後は保証できないということです。

そういうことから、皆さんにお勧めしたいのは歯根破折破折を起こしにくいように、歯の状態を維持することです。

そのためには、まずは歯の神経を取らないようにすることが大事です。
神経をとってしまった歯は弱くなり、歯根破折などを起こしやすくなってしまうからです。

できるだけ神経をとらないように心がけましょう。

そして、歯の神経を守るためには、神経をとる原因となるむし歯の再発を抑えることです。そのためには、精度の高い詰め物・被せ物治療をうけること、そして何よりむし歯が できないように、正しい予防の知識を身につけることが重要です。

予防は、クリーニングではなくセルフケア(歯ブラシ指導や生活習慣指導)を指導してくれる歯科医院にかかると良いでしょう。精度の高い詰め物・被せ物治療は、実際の治療を動画(YouTubeなど)でながしているもので確認するのが良いでしょう。また、詰め物・被せ物治療後に、その場で動画などで精度の状態を見せられる歯科医院はかなり精度に自信を持っている医院と言えます。精度はその歯の運命を決めてしまう大事な要因の一つなので、審美より精度を優先する歯科医院が歯根破折の予防を含めて、歯の長持ちを真剣に考えてくれている医院と判断して良いと思います。