2021

12/16

【お悩み相談】Q8.神経の治療をやり直しても、痛みがひきません。何が原因なのでしょうか。また、このまま被せものをしても良いものでしょうか?

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。

神経治療後の痛み

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神経治療後の痛みQ8.神経の治療をやり直しても、痛みがひきません。何が原因なのでしょうか。また、このまま被せものをしても良いものでしょうか?

回答:痛みの原因は多岐にわたります。まずは歯科用実体顕微鏡やCTなどを用いて精査し、正確に診断することが必要です。

痛みがすっきりと取れない状況については、実際に診察をしないと確かなことは言えません。
実際の臨床においては、『痛みの原因』を鑑別することが困難な場合があります。

特に歯の神経の治療後は、口腔内の臨床症状の他にCT画像を診る事が最低条件となります。
したがって、実際に来院して診査をしてみないと確定診断はできませんが、ここでは考えられる痛みの原因を列挙してみたいと思います。

歯の神経の治療後、痛みが続いているということは、①歯の神経の治療自体に問題があるケース、または、②歯根破折が起こってしまっているケース、③歯以外の原因で歯に痛みが生じているケースの3つが考えられます。一つひとつ、解説してみましょう。

歯の神経治療後の痛み

痛みの原因:①神経の治療自体に問題がある場合

歯の神経治療は根管治療と言います。根管治療は、根管の中の神経を除去したり、感染した根管をきれいに殺菌・消毒したのち、根管を根の先まで蓋をする処置を言います。

しかし、歯の神経の通り道である根菅は複雑で、細く、暗く、また曲がっていたり枝分かれしていたりしていることも多く、根管治療は困難を極めます。

抜髄(神経を抜く治療)の際に、根管の中の神経を取りきれず、神経が取り残されている場合があります。そうすると、取り残した神経が炎症をおこして痛みを発することがあります。神経を取る治療をしたばずなのに、痛みが続いている場合は、神経の治療自体に問題があることがあります。

また、歯の神経の治療時に、歯の根の壁に穴をあけてしまい、痛みを発生する場合があります。

さらに、根管治療時に取り除いた歯髄の代わりに人工的な材料を充填する根管充填の際、根管の先端を突き抜けて充填してしまったり、根管への過度な消毒薬の貼薬が、歯の周りの組織を障害して痛みの原因になることがあります。

以上は、根管治療が成功しなかったケースです。
日本では根管治療の成功率は必ずしも高くありません。根管治療の成功率について、詳しくはこちらをご覧ください(根管治療の成功率について)。

根管治療が原因の場合は、より精密な根管治療を受ければ改善する可能性があります。

痛みの原因:②歯根破折が生じている場合

歯の根にヒビが入ってしまい(歯根破折)、根の周りに炎症を起こして痛みを発していることがあります。
歯茎が腫れる、歯の根っこが膿んでいる、嚙んだ時に痛みがでるなどの症状を呈します。
歯根破折は、このような症状に加え、歯の一部分に深いポケットを形成しています。また、レントゲンではわかりにくいですがCT画像で特徴的な骨の吸収像が確認できることが多いです。
実際に治療をしている際に破折線(ヒビ)が確認できることがあります。肉眼で確認できる場合もありますが、歯科用顕微鏡を用いることで肉眼では確認できないヒビを発見することができます。

痛みの原因:③歯以外が原因で歯に痛みが生じている場合

実は、歯には問題はないにも関わらず、歯に痛みが出ることがあります。

このような疾患を「非歯原性疼痛」と言います。非歯原性疼痛には様々な原因により、多くの分類に分けられます。具体的には以下のようなものが非歯原性疼痛に分類されます。

1. 筋・筋膜性歯痛

簡単に言うと筋肉痛からくる歯の痛みです。痛みの発生源としては、顎を動かす筋肉や鼻腔、関節、首の筋肉、筋肉を覆う筋膜などがあります。
痛みが生じやすいのは上下顎の奥歯で鈍い痛みが多く一日中痛みがある場合もあれば痛みが出たり引っ込んだりする場合もあります。最も大きな特徴はトリガーポイントと呼ばれるしこりのようなものが存在しその部分を押すと痛みが発生し、5秒以上押すと歯痛が生じます。

2. 神経障害性歯痛

末梢から中枢に至る神経の何処かに障害が生じて感じる痛みです。いわゆる神経痛といわれるもので発作性歯痛と持続性歯痛に分けられます。発作性歯痛には三叉神経痛や舌咽神経痛、持続性歯痛には帯状疱疹性歯痛などが分類されます。

3. 神経血管性歯痛

片頭痛や群発性頭痛の症状の一つとして歯痛が生じることが分かっています。痛みは歯の神経の炎症に大変似ています。

4. 上顎洞性歯痛

上顎洞とは呼ばれる左右の上あごの主に奥歯の上にある骨の部分の空洞で、副鼻腔の一つです。
この上顎洞に炎症が起きている場合や腫瘍が存在する場合など上顎洞に疾患がある場合歯が痛くなることがあります。

5. 心臓性歯痛

狭心症や心筋梗塞などの疾患では放散痛という心臓から離れた場所に痛みが出ることが言われています。この放散痛の一つとして歯の痛みがあり特に運動によって歯の痛みが生じると言われています。

6. 精神疾患または心理社会的要因による歯痛

精神疾患の中でも身体化障害や疼痛性障害で歯痛が生じます。また、統合失調症やうつ病などの身体症状として歯の痛みが発生することも知られています。
それだけでなく不安や気分が落ち込む抑うつといった、心理社会的要因も絡み歯に痛みが起きます。

7. 特発性歯痛(非定型歯痛を含む)

様々な検査をしても明らかな原因疾患がはっきりしない歯の痛みを特発性歯痛と言います。

8. その他さまざまな疾患による歯痛
肺がんや悪性リンパ腫などの疾患が原因で起こる歯の痛みのことを言います。

このように非歯原生疼痛は、多くの分類に分けられています。

そのため、非歯原性疼痛を診断する場合には、歯原性の原因がないことを消去法で確かめる必要があります。その際に必要なことは、CT撮影やX線写真での診査や、打診痛の有無です。(CT画像は、非常に重要な意味をもちます)

非歯原性疼痛の場合は、歯科の治療を行なっても痛みは消失しません。
きちんと原因を精査しその原因に沿って治療を行う必要があります。

歯の痛みの種類

歯の痛みの種類

そもそも、歯の痛みには3つの種類があります。

一つは炎症性の痛み。
これは侵害受容性の痛みと言われ、組織に何らかの損傷などが起きた際の痛みです。歯科の分野では急性の歯髄炎や外傷などの歯痛、急性の根尖性歯周炎がこの痛みに分類されます。

二つ目は神経性の痛み。
これは末梢神経障害性痛と言われ侵害受容神経に障害が生じ事により痛みを発します。帯状疱疹や三叉神経痛などが分類されます。

三つ目は心因性の痛みです。
中枢神経障害性疼痛とも言われ、不安や恐怖心、快な気持ち、不快な経験などが分類されます。

急性痛と慢性痛

急性痛とは組織の損傷やその脅威と関連があり損傷を最小限にするために警報の役割をはたしています。原因となる疾患が治癒するとともに痛みは終息していきます。

一方、慢性痛は急性疾患に予期されている経過時間(三カ月以上)を超えて痛みが持続し急性痛の様な役割は果たししません。急性痛を繰り返す慢性痛や急性痛が遷延化した慢性痛、中枢神経系の機能変化や心理社会的要因による難治性慢性疼痛などがあります。数カ月から数年にわたり再発と消失を繰り返す場合もあります。

慢性痛は、慢性的に痛みが続く状態になるので、「夜寝れない」「イライラする」「食欲がない」 「肩が凝る」「気分が憂鬱になる」などという症状を呈することが多いと言われています。

「痛み」の厄介なことは組織が損傷されていなくても、損傷が起こりそうだと判断すると痛みが生じる場合があるということです。

つまり、歯の痛みは歯の治療を行えば必ず治るという訳ではないのです。

しかし、患者さんが痛みに苦しみ悩んでいることも確かです。われわれ歯科医師は患者さんの痛みを取り除くために
考えられることを精査し、最善な治療を行うだけではなく、心情に寄り添うことも大切であると私は考えています。

最後に、被せ物についてですが、最終的な被せ物を入れる前に経過観察のため、一般的なプラスチックの仮歯と違い、金属製の仮歯を長期経過観察のために装着することがあります。

理由は、長期経過観察中に噛み合わせが変わったり、根管への再感染やむし歯の再発を防ぐためです。当医院では仮歯も精度の高い金属製のものを入れます。

最終的な被せ物をするかどうかは、疼痛などの臨床症状が消失し安定していること、また CT画像で根尖病変が無いことを十分な時間をおいて確認してから行うことが必要です。そのため当医院では診断の確実性を上げるため、原則的には6ヶ月ほどおいて から最終的な被せ物の製作を行っています。

歯の痛みの種類