2021

12/07

【お悩み相談】Q7.神経近くの虫歯の治療をしました。10日ほど経つと、歯痛は少し治ってきましたが、頭痛があります。虫歯治療後、歯の神経に入った菌は体に悪影響を及ぼすことはないでしょうか?

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。

虫歯治療後の不調

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虫歯治療後の不調Q7.神経近くの虫歯の治療をしました。10日ほど経つと、歯痛は少し治ってきましたが、頭痛があります。虫歯治療後、歯の神経に入った菌は体に悪影響を及ぼすことはないでしょうか?

回答:神経近くの治療は、刺激により歯の神経に炎症を起こす場合もあります。頭痛などの不調が、治療によるものであるか、主治医に相談をすることをおすすめします。

神経近くの歯を治療すると、とても心配になりますよね。

むし歯が大きかった場合、歯の神経の近くまで削る事になりますが、その時、削った時の熱などの刺激により歯の神経が炎症を起こすことがあります。

また、歯の神経の近くまでむし歯が進行していた場合には、もう既に神経に細菌感染し始めていた可能性もあります。そのような場合には、すでに神経が炎症を起こし始めていた事になりますので、そうなると、さらに削られた刺激に反応しやすくなり、炎症が更に悪化し痛みが続くこともあります。

むし歯の治療後、経過観察をしている状況下と思いますが、痛みがなかなか落ち着かないようでしたら、神経をとることも治療の選択肢の一つになってしまいます。いずれにせよ、治療後の症状を主治医に相談し状況を見極めるのがよろしいでしょう。

また、頭痛が起きているということですが、頭痛は歯軋りが関わっている事もあり、一概にむし歯の治療が原因でないこともありますので、よく見極める必要があります。

むし歯が引き起こす全身の炎症について(誤嚥性肺炎、菌血症、感染性心内膜炎)

むし歯は口腔細菌が関わる疾患です。
近年では、口腔細菌と全身疾患との関連が提唱されるようになりました。
特に、歯周病は糖尿病、リウマチ、虚血性心疾患などどの関連性が報告されています。
歯周病と全身疾患との因果関係や関連性を解明する学問を『ペリオデンタルメディシン』と言います。

また、歯周病菌だけでなくむし歯菌なども誤嚥性肺炎や感染性心内膜炎という病気に影響を与えていると言われています。
ですが、この分野は現在研究段階でありエビデンスレベルが十分でないものもありあくまでも全身疾患との関係が示唆されているものです。

ここでは、むし歯菌などの菌との関連が報告されている疾患について説明したいと思います。

<誤嚥性肺炎>

誤嚥性肺炎とは、お口の中の細菌をはじめとする異物が誤って気管に入って生じる肺炎です。

誤嚥性肺炎には、食事中に口腔内容物を誤嚥したり、唾液が気管に入ることによる不顕性誤嚥(むせない誤嚥)と、就寝中における胃食道逆流による逆流物の誤嚥などがあります。

いずれも、嚥下・咳反射の低下が原因で起きる肺炎です。

誤嚥性肺炎を起こす細菌の多くは口腔内に常在する通性嫌気性菌や嫌気性菌であるstreptococcus属、prevotella属、Fusobacterium属、Bacteroides属などです。

お口の中の衛生状態が悪いと、この様な菌が増殖してしまいます。
これに加え、嚥下機能が低下している人の場合には、食べ物と一緒にこの菌を誤嚥してしまうと、誤嚥性肺炎を起こすリスクを高めます。

誤嚥性肺炎を起こす菌はお口の中の菌のみではありませんが、お口の中をきれいにすることでリスクを減らすことができる可能性があります。

<菌血症>

菌血症とは、なんらかの理由で微生物が血流に侵入し循環している状態のことを言います。

通常は、血液中の免疫細胞である顆粒球、リンパ球あるいは液性成分により侵入した微生物は速やかに排除されます。
そのため、菌血症の多くは一過性のものになります。

しかし、糖尿病や白血病、悪性腫瘍などの全身疾患のある場合や、重症の外傷、熱傷、あるいは免疫の低下している人の場合、血中から微生物が排出されずに、細菌が増殖している状態に移行することがあります。

この状態のことを敗血症と言います。
歯科領域では、抜歯や歯周外科処置後、スケーリング後に、菌血症が起こりやすいと言われています。

<感染性心内膜炎>

心臓の弁膜や心内膜、大血管内膜などに、細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、ウイルスなどの感染性微生物を含む疣腫を形成し、菌血症、血管塞栓、心傷害などの多彩な病態を呈する全身性敗血症性疾患のことです。

感染性心内膜炎はS.mutansグループ、S.mitisグループをはじめとする口腔レンサ球菌が起因菌の一つになることが報告されています。

これらの細菌は、抜歯などの歯科治療時の観血的処置により循環血流中に細菌が侵入しその後、人工弁や傷のある心臓弁膜などに定着・増殖し、バイオフィルムを形成します。

それにより、弁の破壊によるうっ血性心不全や疣腫の遊離による塞栓症などを引き起こします。そのため、感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドラインでは予防するべき患者(人口弁置換患者、感染性心内膜炎の既往、複雑性チアノーゼ性先天性心疾患などの罹患者)や予防した方がよいと考えられる患者(心臓弁膜症、非チアノーゼ性先天性心疾患、閉塞性肥大型心筋症などの罹患者)の抜歯や膿瘍切開などの観血的治療を行う際には抗菌薬などの予防投与が必要となります。

口腔常在菌が全身疾患に及ぼす影響

現在、口腔内常在菌が原因で、様々な全身疾患を誘発することが示唆されてきています。

また、むし歯菌だけではなく歯周病菌も全身疾患に関連すると考えられており、中でも糖尿病、血管疾患、肥満、早産・低出生体重児、骨粗鬆症、関節リウマチ、非アルコール性脂肪性肝炎、慢性腎臓病などとの関連性が研究されてきています。

以上のことより、お口の中の衛生環境や歯科治療(詰め物・被せ物治療、歯の神経の治療、歯周病治療など)の成功率を向上させることで全身疾患のリスクを減らすことができる可能性があります。

全身疾患に影響する可能性もありますので、歯の神経を取る治療を受けるにしても、治療時または治療後の細菌感染によって再治療にならないように、神経の治療もその後の被せ物も精度の高い治療を受けられることをお勧めします。