岡野歯科医院
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お悩み相談

【お悩み相談】Q5.子供の乳歯がむし歯になり、神経まで達しているかわからないので、むし歯を少し残して仮蓋をする治療しています。どんな治療ですか?

記事概要

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。

1回答:乳歯の神経を残す治療に「非侵襲性歯髄覆罩」と「直接覆髄」などがあります。「非侵襲性歯髄覆罩」とは、むし歯を少し残して治療する方法です。

乳歯がむし歯になってしまい、神経まで到着しているかわからない場合、あえてむし歯をすべて取り除かず、少しむし歯を残して仮の蓋をしておく治療があります。

実際の歯の状態をみないと診断できませんが、この場合、乳歯のむし歯が歯の深くまで進行してきている状態かもしれません。このような場合、可能ならレントゲンを撮影して、その画像でむし歯が歯の神経に近いか判断できると思います。(どうしても目視では推測になってしまいますので、実際にむし歯が神経に近いかは判断できません。)

子供の乳歯はのちのち永久歯に生え替わるとはいえ、歯の神経は乳歯でも残したいところです。 実は乳歯の神経は複雑です。よって、乳歯の神経をとる治療はとても難しく、根の先に膿ができてしまうことがあります。膿ができてしまうと、これから生えてくる乳歯の下にある永久歯に影響をおよぼし永久歯のエナメル質が上手くできないことがあります。

これをターナーの歯と言います。

また、根の先に膿がある場合、乳歯の根が早く吸収してしまい、乳歯が早く抜けてしまうことがあります。

その結果、その後生えてくるはずの永久歯の萌出が間に合わず、抜けた場所に隣の歯が傾斜してきて永久歯が生える場所が狭くなり、永久歯が両脇の歯に引っかかって出て、横にズレて生えてしまうことで歯並びに影響することもあります。

ですから、正常に乳歯から永久歯に生え替わるためには、乳歯の歯根が正常に吸収されていくことが必要なのです。 以上のことからも、正常な永久歯の形成や萌出のために、正常な乳歯の歯根の吸収を促せるよう、歯の神経が残っていた方が良いのです。そのため歯科医は歯の神経を残すように努力をします。

それでは、歯の神経を残す処置についてお話ししたいと思います。

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2歯の神経を残す処置:非侵襲性歯髄覆罩

万が一、むし歯が歯の神経の近くまで進行していた場合、むし歯を完全に削り取ってしまうと、歯の神経が露出してしまい、歯の神経を取る処置をしなければならなくなることがあります。

このようなことを回避するため、神経に近いところのむし歯を一部残し、その上に薬剤を塗布し、残ったむし歯の無菌化や再石灰化、むし歯の下の象牙質の添加形成を促して歯の神経を保護する治療法があります。この治療方法を、非侵襲性歯髄覆罩といいます。

非侵襲性歯髄覆罩をした後は、3ヶ月ほど様子をみてから、仮蓋と薬剤を除去し残存していたむし歯が石灰化して硬化し、レントゲン写真でも膿が見られないようなら神経は残せたと判断してそのまま詰め物か被せ物をします。一回でうまく硬化してない時は、同じ処置を数回繰り返しますが、うまくいかない時は神経を取る処置が必要になります。

非侵襲性歯髄覆罩は、何度か処置を繰り返している間に、残したむし歯菌が、歯の神経に感染してしまう可能性(リスク)も考えられ、それを防ぐため、当医院では現在、非侵襲性歯髄覆罩は行なっていません。

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3歯の神経を残す処置:直接覆髄

当医院では、むし歯が大きくてもむし歯を完全に除去します。

むし歯を取りきった時に神経に穴が開いた時は、露出した神経の穴をMTAセメントという材料で塞ぎます。この処置を直接覆髄と言います。この処置も歯の神経を残す処置の一つです。

ただし、直接覆髄を行うときには成功率を上げるためにラバーダム防湿が必要です。(ラバーダム防湿についてはこちら)ラバーダム防湿は、治療する歯をゴムのシートに通して、歯と口の中を隔絶する処置です。治療中、唾液からの患部への細菌感染を防ぎ、消毒剤を使うときでも歯肉に漏洩しないよう、安心して適切な薬剤を使うことができます。 そういうことから神経を残す治療(非侵襲性歯髄覆罩・直接覆髄)をする際は、ラバーダム防湿は治療の成功率を上げるために必須なものだとご理解ください。

また、直接覆髄で用いられるMTAセメントはとても生体親和性が高く、一定期間消毒効果を保つ材料なので殺菌効果もあります。そのため、露出した歯の神経の穴が大きかったり、さほど痛みが強くなければ、当院では、神経をすぐ取らずにMTAセメントで封鎖してしばらく経過をみます。そして症状がない状態で安定しているのを確認したのち、歯の神経が残せたと判断し最終的な詰め物か被せ物をしていきます。

以上のように、乳歯の神経を残す治療に非侵襲性歯髄覆罩と直接覆髄がある事を簡単に説明してみました。 非侵襲性歯髄覆罩も直接覆髄も同じ歯の神経を残す処置なのですが、むし歯を残すか、むし歯をとりきるのかが違います。 むし歯が大きい場合、どちらを選択するかは歯科医師によって違いますし、場合によっては最初から神経を取る方が良いと考える歯科医師もいると思います。

当院では行っておりませんが、非侵襲性歯髄覆罩は健康保険にも導入されている処置です。決して悪い治療方法ではありません。乳歯のむし歯の治療で不明点がある場合は、主治医に説明していただき、納得した上で治療を受けられることをお勧めします。