2018

7/18

お口の中は大地震!?歯や歯茎を傷めつける歯ぎしり、トラブルを回避する5つのポイント

記事概要

自覚のない「無意識」のうちに、歯や歯茎に強大な負担をかけていることが別にあります。それは、物事に集中しているときや就寝中等に多く起こる「歯ぎしり」「食いしばり」です。専門的には、これらを「ブラキシズム」と言います。今回は、これら「ブラキシズム」の要因とトラブルを回避するためのポイントをまとめました。

睡眠時ブラキシズムとは

皆さんが物を食べる毎に咀嚼をします。当然のことながら、咀嚼時には歯に縦や横方向に、応力(負担)がかかっています。

しかし、咀嚼時の力は、間に食物というクッションがはさまっていることもあり、歯にはそれほど大きな負担はかかっていません。

ところが、自覚のない「無意識」のうちに、歯や歯茎に強大な負担をかけていることが別にあります。それは、物事に集中しているときや就寝中等に多く起こる「歯ぎしり」「食いしばり」です。

専門的には、これらを「ブラキシズム」と言います。

ブラキシズムは、「正常な機能とはいえない咀嚼活動や上下歯が接触する顎運動」と定義されています。ブラキシズムには、睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムがあります。

さらに原因別では、医学的疾患が関連しない一次性(本態性)と医学的背景が関わる二次性(医原性・続発性)に分けられます。これらはそれぞれ対処が異なり、一次性のブラキシズムは、歯科での対応が可能ですが、二次性のブラキシズムは歯科医が対処できません。

「歯ぎしり」「食いしばり」は普通に身近に聞くワードですが、意外にその行為自体が口腔組織や補綴物(詰め物や被せ物)に影響を及ぼすのです。

最初に、睡眠時ブラキシズムについて説明します。

睡眠時ブラキシズムは、睡眠中に行われる歯ぎしり・くいしばりのことで、睡眠関連運動異常症とされています。

睡眠時ブラキシズムは、私たちが起きている時に行われる咬合力とは比較にならないほどの強い力で歯に負担をかけていたり、それが数分間にわたることもあり、それが原因で様々な顎口腔系のトラブルを起こしてきます。

通常、覚醒している時は、食べ物を咀嚼している時以外は、上下の歯との間に前歯で3〜4ミリ位、奥歯で0.5〜1ミリ位の空隙があると言われています。

この空隙を安静空隙と言います。

そして、一日のうちで、上下の歯が接触する時間の総計は、17.5分であると言われており、一日で歯や歯周組織には殆ど力が掛かっていない時間の方が圧倒的に多いのです。

ブラキシズムを下顎運動で分類すると、ブラキシズムはクレンチングとグライディングに分けられます。

クレンチングは、「噛みしめ」とも呼ばれ、下顎運動を伴わず音を発しにくくいです。「クレンチング」は「歯ぎしり」とも呼ばれ、下顎運動を伴い音を発しやすいです。

睡眠時ブラキシズムによっておこる問題は、歯の磨耗、詰め物・被せ物の破損・脱離、歯の破損・破折、歯周病の進行、顎関節症、咬合感覚異常などがあげられます。

慢性的・持続的に応力がかかり続けることで、歯や歯を支える歯周組織は確実にダメージを受けており、歯にひびが入ったり、耐え切れず歯根から真二つに割れてしまったり、歯周病が進みやすかったり、むし歯ができやすくなったりなど、様々なトラブルを起こしてきます。

以上の様にブラキシズムの影響は挙げればきりがありませんが、なかなか気づいてもらえなかったり、理解してもらえずらいのが現状です。

ヒトの生涯の1/3が睡眠

ヒトは、生涯の三分の一を睡眠に費やします。1日が24時間ですから、8時間睡眠すれば、ちょうど1日の1/3です。

私たちは、睡眠により生命活動に必要な心身の修復を行い、健康維持をしています。しかしながら、不適切な睡眠は心身の健康維持に悪影響を及ぼしますので軽視できません。

例えば、眠気や疲労は、注意力が散漫になる、感情がコントロールできない、記憶や学習の意欲が低下する、身体の回復・免疫機能が低下して糖尿病などの様々な生活習慣病をひき起しやすくなるなど、様々な悪影響を及ぼします。

つまり睡眠は、ヒトの生理的・心理的機能に影響を与え、また生理的・心理的機能に影響を受けているということです。同様に、睡眠時ブラキシズムも睡眠の質の影響を受けるのです。

睡眠時ブラキシズムは、以前は噛み合わせの不正が関与すると言われていましたが、現在は否定されています。なぜなら、ブラキシズムは歯が一本もない無歯顎でも起こるからです。

さらにブラキシズムは、中枢性に起こり、その誘引として摂取される薬剤や嗜好品・遺伝・性格・ストレス・感覚刺激などが考えられています。

就寝時のブラキシズムは、1回に7〜10秒、1時間に4〜5回行われ、起きている時に思いっきり咬んでいる以上の力で噛みしめていると言われています。あまり負担がかかっていないところに、それだけの力が夜間に掛かるだけでも問題が起こることは容易に予想がつくと思いますが、実は昼間の噛み癖(ブラキシズム)があると、更に歯や歯周組織に良くないことが分かってきています。

睡眠時ブラキシズムとその要因

ブラキシズムは、子供の15〜20%、成人では5〜10%と言われています。子供が成人より多いのは、子供は睡眠が未熟なので多いようです。思いの外、多くの人に起こっていることが分かります。

実はとても頻繁に起こることなのです。医院の患者さんにも非常に多く見られ、歯の寿命を短くしてしまったり、場合によっては顎の関節を痛めてしまったり、深刻な問題を起こしてくることも多いのです。

ブラキシズムを誘引する可能性ある薬・嗜好品としては、飲酒・喫煙・カフェイン・中枢神経に作用する薬(抗精神病薬・精神刺激薬・制吐剤・カルシウム拮抗薬など)等があげられます。

また遺伝的要因も関係します。
夜間の歯ぎしりを自覚する人の約50%が、家族・親族も歯ぎしりを自覚するそうです。

性格やストレスの要因。
性格(後天的)・気質(先天的)の影響も考えられています。特に、歯ぎしりを自覚する人は、自覚しない人より不安傾向を示すことが多いようです。

ストレスに関しては、個人差が大きいようですが、ストレスの感受性が高い方や、もしくはストレス性のイベントがあるなども影響することが考えられます。

また、刺激によるものも誘引となりえます。

例えば睡眠前の運動、睡眠中の感覚刺激などです。

さらに、睡眠関連疾患要因、不眠症などの睡眠障害、睡眠時無呼吸症なども、ブラキシズムを誘引する可能性があると言われているファクターです。

ブラキシズムで起こる様々な問題

それでは、睡眠時ブラキシズムにより起こりやすい問題について、簡単に解説してみます。

トラブルを回避するためには、歯や歯周組織に過度な、または慢性的な負担を掛けないようにしてあげることがとても大事になってきます。早期に兆候をみつけ、対処をすることによってトラブルを回避していくことが必要になります。

例えば、咬筋・内側翼突筋などの下顎を上に引き上げる咀嚼筋の近くに第二大臼歯があります。ブラキシズムがあると、ここへの負担が強いためか、第二大臼歯は歯の中で一番寿命が短く、日本人の平均寿命より寿命が短いです。

そして、歯の数が減ってくると、少ない歯でブラキシズムの力を受けなければいけないので、さらにトラブルを起こしやすくなります。

実は、噛み合わせを変えたり、マウスピースを入れてもブラキシズムは無くなりません。

ブラキシズムの為害作用としては、

歯の摩耗

 歯が削れることにより、歯の先が平らになって審美性が悪くなったり、エナメル質が無くなり象牙質が露出して知覚過敏を起こしたり、摩耗が早いと歯の神経が露出して歯髄炎をおこしたりするときもあります。

詰め物や被せ物が壊れる

ブラキシズムは、タイトに歯に咬合力がかかるので、詰め物や被せ物が外れやすくなったり、壊れやすくなります。ブラキシズムがあると、7倍セラミックが欠けやすいと言われています。

歯が割れる、欠ける

ブラキシズムは、私達が起きている時に思いっきり咬んでいる以上の力で噛みしめていると言われています。そのため、特に神経を抜かれている歯は割れやすくなります。場合によっては、天然の歯が大きくかけたり、ヒビが入ったり、ひどいときには何も歯の治療をされていない歯でさえ割れてしまうこともあります。

歯周病への影響

歯を支える歯槽骨の吸収、歯肉退縮などの増悪因子といわれています。

咀嚼筋や顎関節への影響

ブラキシズムによる持続的な筋収縮が筋痛を引き起こすと言われています。また、ブラキシズムにより過度な負担が顎関節にかかり、顎関節症を引き起す可能性が高くなります。

以上が考えられます。

もう一つのブラキシズム、覚醒時ブラキシズム

もう一つ、覚醒時ブラキシズムについても触れていきます。

睡眠時のみならず、覚醒時(起きている時)に行われる、日中歯牙接触習癖(TCH)も問題視されています。

TCHは、覚醒時に上下の歯を長時間接触し続ける癖のことを言います。皆さんは、何かに集中しているときに気が付いたら「咬んでいた」と自覚したことはないですか?それが、TCHです。睡眠時ブラキシズム同様、顎口腔系に様々な影響を及ぼすと言われています。

顎関節症の患者の52.4%にTCHがあったという報告があるほどです。

しかしながら、TCHは睡眠時ブラキシズムと違い覚醒時の習癖のため、患者さんが意識すれば習癖行動を回避することが可能です。

ブラキシズム対策(トラブルを回避する5つのポイント)

それでは最後に、ブラキシズムの対処について説明します。

覚醒時に起こる昼間のブラキシズム(TCH)は、無意識にしている事が多いようです。

何かに集中している時、例えばパソコンをしている時、テレビを見ている時、料理を作っている時など無意識に行います。こういう場合は、起きている時は意識がありますので、努めて咬まないように気をつけてください。

場合によっては、歯科医師にTCH対策の指導を受けるとよいでしょう。

ブラキシズム対策のマウスピースを夜間つける。寝ている間は意識が無いので、ご自身ではブラキシズムに気を付けようがありません。マウスピースは、歯や歯周組織、顎関節に過度な負担が集中するのを軽減してくれます。

ブラキシズムを悪化させる薬物や嗜好品、飲酒、喫煙に気を付けるようにしましょう。特に薬物に関しては医師・歯科医師の指導を受けてコントロールするべきです。医師に相談してみてください。

ストレスの掛かりそうなイベントを事前にチェックしましょう。生きていく上でストレスの無い環境はあり得ませんが、例えばスポーツなどの運動がブラキシズムのきっかけになることがあります。

何かイベントがあったときは、ブラキシズムが起こることを想定しておくと良いと思います。

最後に大切なのは、定期的な歯科検診を怠らないようにする事です。歯科検診によって、ご自身で気が付けないブラキシズムの影響を早期に察知する事ができるかもしれません。

早く対処できれば、大変な治療を受けずに済んだり、歯を残せる確率も上がります。

ブラキシズムは自覚が無い人が多いのと、その影響を認識しにくいのが難しいところです。診断のつきにくい痛みなどの症状に、実はブラキシズムが関わっていることもあり、診断が付きにくい為に対処が遅れてしまう事もあります。

できるだけブラキシズムの影響の兆候を早期に掴むためにも、定期的な検診が大切である事を最後にお伝えしたいと思います。