2022

2/21

詰め物・被せ物治療を繰り返してはいけない理由 〜むし歯が再発したら何度でもやり直せばいいと思っていませんか?〜

記事概要

『むし歯になったら歯科医院で治療すればいいや』と簡単に思っていませんか?実は、その場しのぎの治療を繰り返しても、むし歯の根本原因である部分を解決しなければ、むし歯が再発してしまいます。なぜ、むし歯の再発が問題なのか、むし歯の再発を繰り返さないようにするためには何が必要なのか。むし歯治療時に最も重要な「適合性」について解説しました。

むし歯になったら歯医者さんで治療すればいい?!

皆さんが誰でも知っている歯の病気『むし歯』。
むし歯は、むし歯菌が出す酸によって歯が溶けてしまう疾患です。

むし歯は直接命にかかわる病気ではないので、むし歯になってもたいして驚かず、”歯医者さんに行けばいいや!”と気軽に考えていらっしゃる方も沢山いるかもしれません。ただし、むし歯治療は以外にもその後の歯のトラブルにつながりやすいので、安易に考えない方がよいのです。

初期むし歯を放置した結果、それが重症化してしまうと、歯の神経が細菌感染を起こします。神経の細菌感染は歯痛を発生させます。こうなると、感染した歯の神経をとらなければならなくなります。歯の神経をとると、歯の寿命が短くなるので、これは避けたいところです。

むし歯が小さい段階で見つかれば、むし歯菌が神経に感染する前に、詰め物をして歯の神経に細菌感染するのを防ぎ、神経を残したまま歯を修復して元通り機能させていくことができます。

この時、『早く治療できたから神経取らずに済んで良かった!』とホッとされるかもしれません。
しかし、安心は禁物なのです。

ここからは、むし歯の再発と再治療が、いかに歯の寿命を短くしてしまうかについてお話したいと思います。

むし歯のメカニズム

むし歯治療の本当の難しさ。むし歯が再発しやすい弱点、『不適合』とは。

当医院にいらっしゃった患者さんの言葉に衝撃を受けました。「銀歯を入れても、むし歯になるのですか?」。その患者さんは、むし歯の治療をしたら、その歯はもうむし歯にならないと思われていました。その患者さんは気づかれていなかったのですが、むし歯治療をしてあるかなりの歯にむし歯の再発がみられていました。では、なぜそんなことが起こってしまっているのでしょうか。

まず、最初におさえておくべき大事なポイントは、『むし歯になった歯に、問題があったからむし歯になった』ということです。

その歯がむし歯になったのは、なんらかの原因があった(清掃不良や歯ぎしり、唾液が届きにくいなど)わけで、その状況が変わらなければ、何度治療しても同じむし歯のリスクに晒されます。
更に、その歯にむし歯が発生しやすい弱点があれば、よりむし歯が再発しやすくなります。

その弱点の一つに『不適合』があります。

適合性とは、歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目のフィットのことです。
繋ぎ目のフィットが悪いことを『不適合』と言い、逆に良い状態を、適合性に優れているといいます。

適合とは
不適合

上記の画像の矢印のところが不適合の段差です。被せ物の治療後、この状態だとフロスをかけてもひっかかってしまいます。

適合

当院で治療した詰め物です。矢印のところが精密治療によって、段差のない詰め物が入った状態です。フロスがひっかかることはありません。

詰め物や被せ物をした部分が『不適合』状態だと、そこにむし歯菌が溜まり、何度でもむし歯が再発します。
むし歯が再発したら、また治療しなおせば良いと考えるかもしれませんが、歯を長持ちさせる条件は確実に悪くなっていきます。

下記の画像、銀歯と歯茎の境目の赤い丸の中の黒いところがむし歯の再発部分です。

むし歯の再発部

まず、むし歯の再発は気付きにくいのです。
神経が残っている歯であっても、むし歯よる痛みが、すぐに出ないことも多いのです。
気付けなければむし歯はどんどん進んでしまいます。

さらに、神経をとってしまった歯は、むし歯が奥深くまで進んできても歯痛が起こらないので全くわからず、気づいた時には抜歯に至るくらい重症化していることもあります。

もうやり直しができないということですね。

以上のことから、詰め物被せ物治療においては、『適合性』をどこまでこだわるかが、その歯の運命を決めると言っても過言ではないでしょう。

繰り返すむし歯治療で、どんどん歯がなくなってしまう

また、むし歯治療を繰り返す事のデメリットの一つに歯を削る事があります。

むし歯治療では、やり直す度に、むし歯に侵された部分だけでなく健全な歯も同時に削り取られていきます。

むし歯が再発した場合、神経が残っている歯であっても、もう神経をとらなければならないほど削られていたり、神経がない歯は元々あまり歯が残っていないことが多く、更にむし歯の治療で削られて歯が無くなると、ペラペラに歯が薄くなってしまって歯が割れやすくなります。

場合によっては治療後に、使うことができるほど歯が残っていないという状況に陥ってしまいます。

詰め物被せ物治療をやり直す度に、歯が長持ちするための条件はどんどん悪くなっていき、最後には被せ物もできなくなってしまうのです。

要するに、むし歯治療とは何度でもやり直しができるわけではないのです。

では、歯が長持ちする(歯の寿命を延ばす)ためにはどうしたら良いのでしょうか?

詰め物・被せ物治療を繰り返してはいけない理由

歯の寿命を延ばすために必要なのは、やはり『適合性』

歯が長持ちする(歯の寿命を延ばす)ために必要なこと。

それは、まず治療が必要なむし歯を作らないこと。そしてむし歯の治療が必要になった場合は、できるだけ健全な歯の部分を多く残すようにすることです。

そして、健全な歯の部分を多く残すためには、むし歯の再発が繰り返されて歯が削られるのを止めなければなりません。
要は、詰め物・被せ物治療のやり直しをしないようにしていくということです。

いかがでしょうか?
話はシンプルだと思います。

むし歯の再発を抑えるためには、詰め物・被せ物の『適合性』を高める事が必須になります。
『適合性』を高めるという事は、歯と詰め物・被せ物との間のつなぎ目をピッタリ合わせるという事です。

このことにより、つなぎ目に溜まる歯垢が歯ブラシやフロス、歯間ブラシで落とせるようになりますし、そもそもつなぎ目に溜まる細菌自体も最小限にすることができるので、むし歯の再発をできるだけ抑えることができます。

それでは、適合性を向上させるには何が必要なのでしょうか。

これは、技術的なことが、かなり影響します。

治療の精度を上げるには歯科医師の高い技術が必要です。また、型採りで詰め物・被せ物を作る場合は、歯科技工士にも高い技術が要求されます。

そのため、この歯科医師と歯科技工士の高い技術を支えるのが、ルーペ(拡大鏡)より遥かに大きく拡大視できる治療用顕微鏡です。

歯科技工士

歯科医師と同じく、歯科技工士の技術もそれぞれ大きく異なるのです。歯科技工士の技術の優劣によっても詰め物や被せ物の精度におおきな差が出ます。

『適合性』を高める高い技術を支える歯科用顕微鏡

歯科用顕微鏡を用いる、顕微鏡歯科治療では、大きく拡大視できれば拡大視できるほど、繋ぎ目のフィットの状態(適合性)を詳しく確認すことができます。

最近では、歯科用顕微鏡を導入する歯科医院も増えてきました。
しかしながら、歯科用顕微鏡の使い方は医院によってまちまちです。

歯科用顕微鏡を用いて治療する場合、チェッキングビューのみに使用する先生もおられます。
チェッキングビューとは、患部の確認のみを歯科用顕微鏡を用いて行いますが、それ以外のほとんどの詰め物・被せ物治療の行程は肉眼やルーペ(拡大鏡)で治療を進める治療スタイルです。

それに対して、ワーキングビューとは、患部の確認はもちろんの事、詰め物・被せ物治療の全ての行程で、歯科用顕微鏡で拡大視しながら治療する方法を言います。健全な歯の削りすぎも防ぐことができ、またむし歯の取り残しを減らしたり、適合の良い詰め物・被せ物治療によりむし歯の再発も減らせます。ワーキングビューで治療を行う方が、確実に精度の高い治療ができるのです。

ただし、ワーキングビューで治療すると、チェッキングビューで治療するより格段に治療時間がかかります。
全行程において歯科用顕微鏡を使うと、治療の不備部分が多く見えてしまうため、修正が多くなり長い時間を必要とします。逆に、歯科用顕微鏡を用いず肉眼やルーペのみで行う治療や、チェッキングビューでしか歯科用顕微鏡を使わない治療では、あまり不備部分が見えないまま治療が進むので早く治療が終わります。

そのため、ワーキングビューでの治療は、1日に治療できる患者さんの人数が少なくなります。
つまり、一人一人の患者さんのために時間をとって治療を行うのです。
言い方を替えれば、患者さん一人一人に、時間をかけてしっかり治療するということです。

また、ワーキングビューでの治療では、高い顕微鏡治療の技術が必要です。

治療中、長い時間かけて、様々な方向から角度を変えて患部を見ながら治療するので、患部をミラー越しに見ながら治療することが常に要求されます。これをミラーテクニックと言います。高度な顕微鏡歯科治療では、このミラーテクニックの技術の高さが、そのまま治療の精度の高さと比例すると言えるでしょう。

さらに、顕微鏡治療は、高倍率を保った状態を維持して様々な方向から患部を見ながら治療するため、角度を変えて見る度にピントがズレ、簡単に患部がぼやけてよく見えなくなってしまいます。

それを瞬時に解消してくれるのが、高性能の歯科用顕微鏡です。
高性能の歯科用顕微鏡は、ピント調節を手ではなく、足のフットペダルで行えます。

2本しかない両手は、常に患者さんの歯を治療し、ピントは常に足のフットペダルで合わせます。

治療しながらズレ続けるピントを、フットペダルを操作して瞬時に合わせ続けながら、高倍率でクリアな画像を常にキープすることで継続的にワーキングビューができ、精度の高い治療をすることができます。

歯科用顕微鏡は、適合性の向上にはとても有効な機材なのですが、高倍率で見えていなければ始まらないのです。
そのためには、術者に高性能の歯科用顕微鏡を使いこなす高い技術が要求されます。

はじめに述べたように、むし歯治療は簡単ではないのです。治療を安易に考えることは、歯を長持ちすることにはつながりません。

フットペダル

まとめ

最後に、

精度の高い適合性の良い詰め物・被せ物をすると、むし歯の再発は著しく減少します。

そうすれば、詰め物や被せ物のやり直しは減り、歯の神経をとる機会も減り、歯が削られる機会も減り、歯が破折する機会も減り、その結果、歯を長持ちさせて抜歯を減らすことができます。(歯の寿命を延ばすことができます)

『むし歯の治療をしたから、もう大丈夫!』

と安心してはいけないのと、簡単に治療のやり直しはできると考えない方が良いということ、むし歯の再発を抑えるには詰め物・被せ物の精度が重要ということを認識していただきたいと思っています。

  • 詰め物・被せ物をしても、むし歯はできる
  • むし歯が再発する原因の一つに、詰め物・被せ物のつなぎ目の『不適合』がある
  • むし歯治療を繰り返すと、その度に健全な歯も削られて歯が長持ちする条件が悪くなる
  • むし歯治療の再発を防ぐためには『適合性』を高めることが大事
  • 『適合性』の高い状態とは、歯と詰め物・被せ物のつなぎ目がぴったりあっている状態
  • 『適合性』を高めるには精度の高い顕微鏡歯科治療が必要
  • 顕微鏡歯科治療にはチェッキングビューとワーキングビューがありワーキングビューで治療すること
  • ワーキングビューでの精度の高い治療で有効なのがフットペダルでのピント調整
  • 『適合性』を高める治療には、歯科医師と歯科技工士の高い技術が必要