2017
12/25
知ってほしい本当の歯科用顕微鏡の実力8ポイント!
顕微鏡歯科治療ってご存知ですか?歯科用顕微鏡を用いて行う治療で、当院ではすでに10年ほど前から導入。歯科用顕微鏡の優れた力をより専門的な視点からご説明すると共に、当院の顕微鏡歯科治療についてもご紹介します。
この記事の目次
今回は、患者様からのお悩みではなく、よくある歯科治療の現場の問題を例に、特に知っていただきたい事実を説明いたします。
今回のブログは、当院が10年ほど続けてきた、顕微鏡歯科治療の優れたところについてお話したいと思います。当院が顕微鏡歯科治療を始めた当時は、ほとんど導入されていなかった歯科用顕微鏡も、今は、導入する歯科医院が増えてまいりました。ただ、残念ながら患者さんの方々には、顕微鏡歯科治療の本当の良さがまだ十分に伝わっていないようです。
そこで、今回のブログでは、より専門的な視点から、分かりやすく歯科用顕微鏡の力を説明します。
歯科用顕微鏡の最大のメリットは『良く見える』こと。
歯科治療に歯科用顕微鏡を使うようになってから、10年弱が経過しました。
以前は、歯科治療に顕微鏡を使うと説明しても、患者さん側がピンときていませんでしたが、今では、認知度少しもあがり、よく勉強されて来院される患者さんも増えてきました。
なぜ、歯科治療に歯科用顕微鏡が必要なのか?
それは、お口の中は、良く見えないからです。
隣にいる方に、アーンと口を開いてもらってお口の中を覗いてみてください。
奥に行けば行くほど暗くて見えなくなりますよね。
特に根管(歯の神経の通り道)や歯周ポケットの中は、更に細く狭く、より繊細な治療が必要なのに、どうやって治療しているんだろうと思いますよね。実は、肉眼や拡大鏡(ルーペ)では、根管やポケットの中はよく見えないのです。よく見えなければ『勘』による治療になってしまいます。
歯科用顕微鏡で治療をするようになってからは、それまで行き詰まっていた壁をことごとく乗り越えることができるようになりました。
歯科用顕微鏡は、暗く狭い口腔内での治療に、とても大きな力を発揮するのです。
歯科用顕微鏡は、ユニット(治療椅子)に備え付けられているライトより、光源を患部により近づけられるため、より明るくお口の中を照らすことができます。はっきりと、鮮明に、歯や患部、根管内(歯の神経の通り道)を見ることが出来るのです。
歯科用顕微鏡の拡大倍率は3〜30倍です。
それにくらべて肉眼は1倍、ルーぺ(拡大鏡)は平均で2〜3倍、良くて8倍です。肉眼やルーペで見えなかったものが、顕微鏡では見えてきます。
私が顕微鏡治療を始めて思ったのは、とにかく良く見えるということです。
私も年齢的な変化で多少の老眼があります。しかし、この老眼を感じている私の視力の弱点が歯科用顕微鏡を導入することにより、視力を補うどころか、それ以上、余りあるほどの視力の強化ができました。
それに加え、これまで自分が臨床で培ってきた知識と経験をプラスすることで、さらに良い治療結果を出す事ができ、今まで上手くいかなかった治療が、ことごとく上手く行くようになりました。
結局は、老眼うんぬんの前に、歯科用顕微鏡を用いる前は、よく見えていなかったのです。
見えていないことで、なすべき事が、そこで行われていなかったのです。正しい情報がなければ、正しい診断と、正しい処置ができません。歯科用顕微鏡を使うようになり、この10年で実感していることは、この一つに総括できます。
より大きく拡大する事によって状況判断が正確になり、また誤った判断もしなくなり肉眼やルーペより成功率の高い治療が可能となります。(加えて言うなら、脳外科でも顕微鏡治療が主流になっているのは、よく見えるし繊細な治療ができるからです。)
よく見えれば治療が上手くいく。当たり前といえば当たり前の話です。
当院の顕微鏡歯科治療は、2種類の顕微鏡を使い分けています
それでは、実際、歯科治療に歯科用顕微鏡を使って感じていることをご説明します。
顕微鏡歯科治療を用いるメリットは、まとめると3点です。
- 術野の拡大、
- 明るい照明、
- そして、ドキュメンテーションです。
拡大による視覚強化は、どのメーカーの顕微鏡を使っているかが重要です。
メーカーや機種によってレンズの明るさやフォーカス合わせのシステムも違うのですが、やはり、当院が2台導入しているカール・ツァイスのプロエルゴが最適です。
歯科用顕微鏡に搭載される照明は、ハロゲン、LED、キセノン等がありますが、私は2種類の光源のプロエルゴを使い分けています(ハロゲンとキセノン)。
例えば、コンポジットレジン充填、インレー、クラウン、などの補綴治療時は、ハロゲンライトを使用します。
逆に、歯周病、根管治療時等にはキセノンライトを使います。
キセノンライトは、実は、ハロゲンライトの2倍以上の明るさがありますので、根管やポケットの中など、より狭く暗いところを覗くのに適しています。
それに対して、ハロゲンライトは、キセノンライトよりコンポジットレジン充填に適しています。キセノンライトの波長は、コンポジットレジンが固まりやすい波長です。充填途中でコンポジットレジンが固まり始めてしまうと、うまく充填できません。ですので、充填中に固まりにくい照明であるハロゲンライトをコンポジットレジン充填時に使うのです。
このように顕微鏡も治療内容によって最適な顕微鏡を使い、更に治療の成功率を高めます。
そして、最後にドキュメンテェーションです。
ドキュメンテーションとは、いわば治療記録の事です。
治療用顕微鏡にはカメラやビデオを付けることが出来るので、治療時の状況を録画し、治療後に動画をディスプレーに再生して見る事が出来るので、患部の状態や治療内容を患者さんに伝えやすいのです。
言葉より写真、写真より動画の方がより理解しやすいはずです。
治療後に必ず動画をお見せしていますので、顕微鏡治療の担保をする事ができるのです。自分の治療内容をその場で見れるのは、患者さんにとって安心材料にもなると思っています。
それでは、顕微鏡歯科治療は、どのような治療でメリットがあるのかについて、私の実際の経験からお話してみたいと思います。
1.歯の神経の治療(根管治療)
根管治療においては、根管の奥の奥である根管の先が綺麗になっているかが最も大事です。しかし、根管は細く狭く、肉眼やルーペでは根管の根の先を見ることはできません。見えなければ治療が不十分なのに気がつかないまま根管治療を終えてしまうかもしれません。治療用顕微鏡は、根管の奥の奥である根管の先端まで見ながら治療することができるのです。
上が拡大鏡の倍率で見た画像です。根管の中は暗くてよく見えません。下は、マイクロスコープで見た画像です。根管内が明るくハッキリ見えます。
2.歯周病治療
歯周病を改善するためには、歯の根に付いた歯石を除去することが必要です。しかし、歯周病が進行して来ると歯周ポケットは深くなり、歯石も奥深いところに付いてきます。
歯周ポケットは狭いので、深くなればなるほど歯石は見えなくなります。また歯の根の表面は溝があったりデコボコしていたりするので、歯石の除去は更に大変になります。
歯周ポケットが深くなると肉眼やルーぺではよく見えないので、勘や手指の感覚になります。そうなると、どうしても歯石の取り残しが多くなり歯周病が治りにくいということになります。
治療用顕微鏡は明るい光源で狭い歯周ポケット内を照らし、大きく拡大することによって勘ではなく目視で歯石を除去することができます。
4.クラウン・インレー(歯の修復治療)
型を採ってむし歯の歯を修復する方法にクラウン(被せ物)とインレー(詰め物)があります。むし歯が大きくコンポジッットレジン充填ができないケースに多く用いられます。
コンポジットレジン充填と同じく、クラウンやインレーが歯にピッタリ合っていないと、つなぎ目にバイ菌が溜まってむし歯が再発します。
クラウンやインレーを作るための型どりが正確にできないと、精度の悪い、歯にピッタリ合わないクラウンやインレーができてしまいます。やはり、型とりも歯科医の技量が出ます。また、型から実際にクラウンやインレーを作る歯科技工士も、ピッタリ歯に合わせられる歯科技工士出なければ、精度の悪いクラウンやインレーができてきてしまいます。
歯科用顕微鏡で拡大しクラウンやインレーを歯にピッタリフィットさせることによって、清掃しやすくバイ菌が溜まりにくい状態にすることができ、むし歯が再発しにくく歯を長持ちさせることができます。
上の写真は、矢印のところが金の詰め物が飛び出しています。汚れが溜まりやすく、フロスも引っかかってしまいます。下の写真は、当医院で行った詰め物です。歯にピッタリフィットしています。この状態なら、フロスも引っかからず、清掃しやすいのでバイ菌が溜まりません。