岡野歯科医院
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役立つ歯のコラム 役立つ歯のコラム

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白い詰め物・被せ物は、必ずしも長持ちする訳では無い。

白い詰め物・被せ物は、必ずしも長持ちする訳では無い。

記事概要

白い詰め物・被せ物など『審美歯科治療』を受ける患者さんが増えていますが、自由診療(自費治療)の審美歯科治療だからといって、必ずしも長持ちするとは限りません。なぜ長持ちしないのかという理由を知っていただき、長持ちさせるための知識として詰め物・被せ物の適合とそれにおける歯科用顕微鏡の役割について説明します。

1はじめに

本ブログは、患者さんから寄せられたお悩みへの回答を中心に、皆さんにぜひ知っていただきたいお話を、できるだけ分かりやすくまとめて記事にしています。
今回は、患者さんからのお悩みではなく、よくある歯科治療の現場の問題を例に、特に知っていただきたい事実を説明いたします。最近では、白い詰め物・被せ物など、『審美歯科治療』を受ける患者さんが増えてきました。しかし、保険診療とは異なる自由診療(自費治療)の審美歯科治療だからといって、必ずしも長持ちするとは限りません。今回は、できるだけ長持ちさせるための知識として、詰め物・被せ物の適合とそれにおける歯科用顕微鏡の役割について説明したいと思います。

2自費の白い詰め物・被せ物だからといって、必ずしも長持ちするわけでは無い理由。

最近では、いわゆる『審美歯科』という言葉が認知されてきて、どこの歯科医院でも白い歯の詰め物・被せ物を推奨し、“白く美しい歯並びを取り戻す!”というキャッチフレーズが聞かれるようになりました。

保険診療一辺倒だった、これまでの日本の歯科治療の歴史を考えれば、自由診療(保険外診療)にて、材料も治療法にもこだわった歯科治療が選ばれる事は、それだけ患者さんの歯科医療に対する意識が向上していることであると感じています。

しかし、何でもかんでも白い詰め物・被せ物が良いという訳ではありませんので、注意が必要です。今回のブログでは、審美歯科治療における別の側面の注意点についてまとめてみたいと思います。

審美歯科治療における、白い詰め物や被せ物は、見た目も良く、形も綺麗です。しかし、見た目が良いからといって、必ずしも長持ちするとは限りません。

一般的に、詰め物や被せ物をダメにする原因として、『不適合』によるむし歯の再発がありますが、それ以外にも、せっかく入れた白い詰め物や被せ物をダメにする原因があります。

それは『材質』の問題です。

Photo.自費の白い歯の詰め物・被せ物
自費の白い歯の詰め物・被せ物

必ずしも長持ちするわけでは無い

3白い詰め物・被せ物は硬く、精度も悪くなりがち

では、白い詰め物・被せ物の『不適合』によるむし歯の再発を説明する前に、審美歯科治療に用いられるセラミックやジルコニアの材質について説明したいと思います。実は、これらは天然歯と異なり硬い材質であるという事を知っておいていただければと思います。

詰め物や被せ物が硬い材質だと、天然の歯よりすり減りにくいということが起こります。特に白い詰め物や被せ物は、天然歯より擦り減りにくく強く当たって負担が掛かってくるのです。

ビッカース硬さ(物質の硬さを表す指標で値が大きくなると硬い)で表すと、大まかに、天然歯の硬さが300Hv・セラミックが500Hv・ジルコニアが1300Hvです。

セラミックとジルコニアは、天然歯より硬いため、長く使っているうちに土台の歯に負担が掛かり、土台の歯根が割れたり、歯がグラグラ緩んで歯周病が進んできたり、詰め物・被せ物が壊れたりなどのトラブルをおこしてきます。

実は、天然歯と比べて、セラミックやジルコニアが硬い事によるデメリットについては、あまり歯科医院にて説明されない部分ですが、知っておくべき大切なポイントです。周りの天然の歯がすり減っていくのに、白い歯を入れたところだけすり減りにくいので、長期的には白い詰め物・被せ物を入れた歯に負担がいつの間にかかかっていたということになりえます。そして、忘れたころにトラブルを起こしてきます。詰め物・被せ物の硬さの問題は、最初はトラブルを起こしませんが長期的には(時間が経ってから)予後に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

また、白い詰め物・被せ物は、精度良く歯にピッタリ合わせるのが難しい材質が多く、特に詰め物で顕著です。精度が悪い(適合が悪い)と、繋ぎ目に歯垢が溜まり人工的にむし歯菌の巣ができてしまいます。そして、そこに溜まった歯垢は、もう何をしてもお落とすことは出来ません。その結果、むし歯が再発しやすくなってしまうのです。

白い詰め物・被せ物には、問題を起こしやすい材質が多いことは、意外に知られていません。

Photo.白い歯の詰め物・被せ物
白い歯の詰め物・被せ物

4白い詰め物・被せ物を長持ちさせるために精度の高い治療を。

それでは、白い詰め物・被せ物治療(審美歯科治療)をできるだけ長持ちさせるためにはどうすれば良いでしょうか。

材質の硬さに関しては変えようがないので、必要に応じて噛み合わせの調整をする、またはナイトガードをするなどの対策をするしかありません。

そしてもう一つ重要なことは、精度の高い(適合の良い)白い詰め物・被せ物治療にするということです。詰め物・被せ物の型取りから技工までの一連の過程の精度を高め、歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目を隙間なくピッタリ合わせるということです。

歯の被せ物および詰め物の治療は、まずは型採りから始まります。細かい所までこだわった、精度の高い型採りこそ、その後の詰め物・被せ物の仕上がりに影響します。

そして、次に、詰め物や被せ物を作る技工技術です。いくら高い精度で型取りをしたからといって、その後の技工技術の精度が低ければ歯にピッタリ適合した精度の高い詰め物や被せ物はできません。実は、歯科技工士さんの技術というものも差があるのです。患者さんの歯に良く適合した技工物を作れる歯科技工士さんにオーダーすることも、歯科医師の重要な役割だと考えています。

このように歯科医師と歯科技工士が連携して適合の良いピッタリ合った詰め物・被せ物をすることでむし歯の再発を極力抑える事が出来ます。

しかし、現実的には、精度の高い型取りおよび技工物を完成させることは容易ではありません。そこで登場するのが歯科用顕微鏡です。審美歯科で使われる詰め物や被せ物は、材質的にも技術的にも歯にピッタリ合わせるのが難しい素材で作られています。

このような適合の難しいケースであっても、歯科用顕微鏡を用いて、最大倍率(30倍)で見ながら治療することで、非常に精度の高い型採りができます。そして、それを腕のいい技工士に依頼することで、患者さんの歯にピッタリ合う詰め物・被せ物が実際にできあがってきます。

ただ、ここでもう一つお伝えしておきたいことがあります。たとえ、歯科用顕微鏡を使っていても倍率が低ければ、実際はよく見えていないということです(当院に導入している歯科用顕微鏡は最大倍率を常に維持しながら患部を見続けることができる顕微鏡です)。歯科医師の顕微鏡歯科治療技術そのもののスキルにもばらつきがあります。患者さんのために、適合のよい詰め物・被せ物を提供するには、様々な機材と高い技術が必要なのです。

5白い詰め物・被せ物を入れた後をフォローできる歯科治療が重要

審美歯科治療やインプラント治療など、従来の保険診療外で行われる自由診療が、だいぶ世の中に認知されるようになり、これらの審美歯科治療を勧める歯科医院も増えてきたように思います。

長年、この歯科医療の分野で患者さんを診てきた私は、前に述べたように、適合の良い白い詰め物・被せ物を提供できる技術と一緒に、治療を行った後の保存治療および予防歯科治療も重要だと考えて、日々診療しています。

白い詰め物・被せ物を入れて『はい、終わり』ではないのです。

治療後の状態の維持がなされなければ、治療の意味が全くありません。

しかし、最も重要である、このポイントが審美歯科治療領域では重要視されていないような気がするのです。その証拠に、セラミックやジルコニアは天然歯よりも硬いという事実を、どれだけの方が知っているでしょうか?硬い故に、注意しなければならないポイントも、どれくらいの方々に周知されているでしょうか?

また同時に、詰め物や被せ物に『適合』『不適合』という視点で評価されるべきであり、それが審美歯科治療における耐久性を左右することも、どれだけの方々がご存知でしょうか?

これらのことが、保存治療および予防歯科治療が軽視されていると感じてしまう理由です。

お金を掛けて審美歯科治療を受けたとしても、入れた詰め物や被せ物が長持ちするとは限りません。

お口の中は、皆さんが想像する以上に過酷です。掛けた費用を無駄にしないためにも、長持ちするための知識武装や実際の対策を事前にしていくことをお勧めしたいと思います。