2019

8/26

【動画で見る、顕微鏡歯科治療と根管治療:Vol.3】根管治療の難しさ、そして再根管治療も失敗する理由

記事概要

根管治療(歯の神経治療)の成否は、その歯を抜歯するかしないかをも左右する治療です。残念ながら、日本での根管治療の成功率は低い状態です。そんな中、根管治療が成功しにくい理由や根管治療の難しさを、少しでも多くの方々に理解していただき、根管治療についての知見を深め、歯を残すための一助にしていただくため、動画を使った解説ブログを書きました。

イニシャルトリートメントと再根管治療

これまで、本サイトのコラムでも、たびたび根管治療の重要性については触れてきました。何故なら、根管治療の成否は、その歯を抜歯するかしないかをも左右する治療だからです。残念ながら日本での根管治療の成功率は低い状態ですが、根管治療が成功しにくい理由や根管治療の難しさを少しでも多くの方々に理解していただき、根管治療についての知見を深め、歯を残すための一助にしていただけたらと思います。
今回は、根管治療の動画を観ながら、その実際をできるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

歯の神経の治療の事を「根管治療」といいます。そして、その歯がうける初めての根管治療は、『イニシャルトリートメント』と呼ばれます。

また、治療した根管をもう一度治療しなおす事、つまり、二回目以降の根管治療を、『再根管治療(リトリートメント)』と呼びます。

『イニシャルトリートメント』は、神経が生きている場合と、神経が既に死んでいて細菌感染している場合があります。イニシャルトリートメントは、神経が生きている場合も、死んでいる場合も基本的に同じ治療をしますが、神経が死んでいる場合は細菌感染が伴うことが多く、根の先に膿を持っていることもあります。

それに対し、『再根管治療』は以前根管治療をした根管に感染がある場合に行われる”根管治療のやり直し”です。

再根管治療の主な原因は、イニシャルトリートメント時の根管への感染、もしくは、むし歯や歯根破折による根管への再感染などが考えられます。
やはり、根の周りに膿を持っている事も多く、特に歯根破折は抜歯に至りやすいです。

このように根管治療と言っても、根管の状況は様々で、それぞれの根管の状況で根管治療の成功率や歯の保存(歯を残す)の確率も左右されます。特に、再根管治療は治療の成功率が下がるので、根管治療の難易度が上がります。ですので、再根管治療の成功率を上げる事が、その歯科医院の腕の見せ処と言っても過言ではありません。日本では、再根管治療になることが多いだけに、不必要な抜歯を避けるため、当医院では再根管治療を成功させることに拘っています。

根管治療

再根管治療の実際

では、実際に例を挙げて再根管治療の説明をしてみたいと思います。
下記は、再根管治療の動画です。6分49秒の動画ですので、最初から最後まで観ていただくと、イメージが付きやすいと思います。

この症例は、右側臼歯部が痛むと言って来院されたケースです。レントゲン画像では根尖部に黒い影が認められています。そして、根の先が膿んでいるのが確認されました。

本症例は、根管の石灰化が著しく、根管の入り口が塞がって、おそらく以前の肉眼治療で根管を見つけられずに、未治療の細菌感染した根管が残ってしまったことで、歯の根の周りが膿んできたことが考えられるケースです。

治療方針として、本症例は、感染防御のための隔壁作成、ラバーダム防湿を行い、顕微鏡下で慎重に石灰沈着を除去し、未治療の根管を見つけた後に、根管を清掃、殺菌・消毒する必要がありました。

この歯には金属の詰め物がしてありましたので、再根管治療のためにまず詰め物を除去します。根管にもしっかり詰め物の金属がはめ込んであるので、治療用顕微鏡にて強拡大視し、歯に穴をあけないように慎重に詰め物を除去しなければなりません。

詰め物を外すと、むし歯が歯肉縁下にまで及んでいるのが確認できました。まず、歯肉を傷つけて出血させないよう慎重に詰め物の下に隠れていたむし歯を除去し、感染防御のために隔壁を作ります。この歯のように、歯肉から上の部分の歯があまり残っていないケースでは、ラバーダム防湿をするために隔壁の作製が必要です。

隔壁作製後、ラバーダム防湿下で再根管治療を開始します。しかし、根管の石灰化が著しく、あるべきところに根管の入り口が見当たりません。顕微鏡の強拡大下で観察したところ、小さな根管の入り口を見つけることができました。そこを超音波の機械で入り口を広げ、本来の根管を探し根管の殺菌・消毒をしていきます。

この歯は、すでに治療が施されていた別の根管も感染していたため、その根管も顕微鏡下で蓋材を取り残しがないように除去し、感染した根管内を根の先まで殺菌・消毒しました。この時、蓋材が残存していると根管の隅々までの消毒を阻むばかりか、この蓋材自体も感染源になっていることがあるので、何度も顕微鏡下で根管内に蓋材が残存していないのを確認します。

根管の先まで消毒薬で根管内を殺菌・消毒した後、それぞれの根管の状態に合わせて根管充填材を選択し、根管充填(根管の封鎖)を行い、根管治療を終えました。

数か月後、レントゲンにて根尖病巣の改善が確認できました。

本治療動画から読み取れることは、一般的に肉眼やルーペ(拡大鏡)で行われている根管治療は、狭く暗く見えづらい根管の状況を把握するのは難しく、勘や経験より治療せざるをえなくなるのですが、やはり治療の質を担保するのは限界があるという事です。実際に目視で状況を詳しく把握しながら治療することが、根管治療には必要なのがお分かりいただけると思います。

根管治療

イニシャルトリートメントだけでなく、再根管治療もうまくいかない原因

歯の神経治療(根管治療)をうけた後に、どうも歯の調子が悪いと感じている方もいると思います。

根管治療が成功していないと、歯肉が腫れたり、咬んだ時に痛かったり、ケースによってはひどく冷たいものがしみたり、場合によっては何もしなくても痛んだりと、不快な症状に長く悩まされたりします。

『一度、治療したはずの歯なのに…』と不安に思われるかもしれませんが、根管治療の再治療は、実は珍しい事ではありません。

近年では、根管治療の不備が様々な全身疾患に影響を及ぼしている可能性も示唆されるようになりました。

そして、危惧されるのは、再根管治療の失敗を繰り返すことで、最終的には抜歯を迎えるという最悪のシナリオに進んでいく事です。

残念なことですが、日本では根管治療の成功率が低く、再根管治療が必要になることも多いのですが、実は、その再根管治療自体も成功率が低いのです。

その原因は、不十分な感染防御(ラバーダム除湿を行わない等)と複雑な根管に追従できず根管を十分に殺菌・消毒できていない(感染源の取り残し)からです。

基本的に、根管治療は細菌感染との戦いです。感染がなければ、もしくは感染が除去できれば、根管治療は成功します。

根管治療を成功に導くには、(1)ラバーダム防湿を行う(2)清潔な器具を使う、そして狭く暗く見にくい根管をよく見えるようにするために(3)歯科用顕微鏡を使うことが必須です。

特に治療用顕微鏡下での治療は、根管内の状態を顕微鏡で確認するのみで使う“チェッキングビュー”ではなく、根管内を常に顕微鏡で観ながら治療する“ワーキングビュー”で行わなければいけません。

チェックのみ顕微鏡で、そのあとの治療が肉眼やルーペ(拡大鏡)では、結局は見えていない治療に戻ってしまいます。ただでさえ根管は複雑で、顕微鏡を使用したワーキングビューで治療しても困難を極めるのに、肉眼やルーペによる根管治療に戻ってしまっては、顕微鏡で見ている意味が無くなってしまいます。

また、歯科用顕微鏡を使った治療は、高倍率を維持しながら治療しなければ、その効果を最大限にすることはできません。当たり前ですが、低倍率では見えないものが、高倍率では見えるのです。

そして、状況が良く分かれば、より良い治療ができるのです。但し、倍率が上がれば上がるほど、治療の難易度も上がるので機材はもとより、高い治療技術が必要となります。

実際に高倍率で治療しているかは、治療後にモニターに映しだして治療状況を説明できるかで分かります。

理想的な根管治療を受けるには、時間・費用・治療機材・術者の技術など、様々なハードルがありますが、少しでも多くの方の歯が抜歯から免れ、ご自身の歯を少しでも長く使えるようになることを、当医院は切に願っています。