2021

12/01

【動画で見る、顕微鏡歯科治療と根管治療:Vol.6】むし歯が大きく神経の近くでも、できるだけ歯の神経を残す治療『直接覆髄』

歯の神経はできるだけ残したほうが良い5つの理由

むし歯が大きく、歯の神経に近い場合、むし歯を完全に除去すると歯の神経が露出してしまうため、痛みがなくても神経を取られてしまうことがあります。

このようなケースでも、歯の神経を残す処置はあるのですが、処置がうまくいかずに後々痛みが出たり、神経が死んでしまって歯の根の周りに膿を作ってしまう可能性があるため、神経をとるという選択になってしまいます。

仮に、神経を取らずに歯の神経を残す処置を選択した場合、結果が良くないと歯科医師と患者さんとの信頼関係も損ねてしまいますので、あえて神経を残す処置をしない考え方もあるようです。

しかし、歯の神経をとるということによって、皆さんが予想もしていなかった事が起こり始めます。

以下に、歯の神経をとった後に起こるデメリットについてご説明いたします。

1.歯が割れやすくなる。

歯の神経を取る治療(以下、根管治療)の時には、歯に穴を開けて、更に神経取りやすいように歯の色々な場所を削ります。

歯の神経は複雑なことが多く、曲がっていたり、枝分かれしていたり、吻合などもみられたりします。歯の神経の通り道である根管は個々の歯によって形が様々です。植物の葉脈をイメージしていただけると良いでしょう。その複雑性から、治療時に大きく歯を削らなければならないこともあります。

歯を大きく削る主な目的は、①神経組織の取り残しをしないため(神経組織を取り残すと、後々腐敗して根管を汚染し根の先にできる膿の原因になります)、②歯の神経を取った後の根管への細菌感染を防ぐために消毒薬が行き渡りやすくさせるため、③神経を取った後の根管を根の先まで根管充填材で封鎖しやすいようにするため(根管が歯根の先まで蓋されないと、死腔という隙間ができてしまいます。その隙間で細菌が繁殖し歯根の先に膿を作る原因になることがあります)、などです。

以上のように、根管治療の成功率を上げるため、便宜的に歯が削られ薄くなってしまうことがあるのです。

そうすると、歯の根にヒビが入りやすくなり、結果的に根が割れて抜歯になってしまうこともあります。また、歯の神経を取ると根の周りにある歯根膜の血流が減少し、咬合力を感じる感覚が鈍くなり強い力を検知しにくくなり余計に力がかかりやすく、ヒビが入りやすくなるとも言われています。

ですので、可能なかぎり根管治療自体しない方がよいのです。

2.神経を取る処置、つまり根管治療の成功率は100%ではありません。

とくに日本での根管治療の成功率は残念ながら低く(成功率)、根の先に膿を作る可能性が高いです。
なかでも、①歯科用顕微鏡を用いない、②CT診断を行わない、③ラバーダム防湿をしない、④十分な治療時間を確保できない、⑤精度の良い被せ物ができない、など、これら5条件が重なると、さらに治療の成功率を下げる要因になります。

また、根管治療を何度もやり直すことはさらに治療の成功率が下がります。その結果、膿が治らずに抜歯となってしまいます。

3.歯の神経を取ると歯の色が黒く変色してしまうことがあります。
歯の寿命自体には影響はありませんが、見た目の問題が出てくることがあります。これは、歯髄炎や歯髄壊死などの歯の神経の疾患、不完全な根管治療によって、血液、歯髄組織変性産物が象牙細管内に侵入して生じると考えられています。

4.むし歯の再発に気づけない。
歯の神経を取ると、むし歯が再発した時、痛みが出ないのでむし歯の再発に気づけません。気づかないうちにむし歯が進み放題進み、詰め物や被せ物が外れた時には、もう歯の根が使えない状態になってしまっていることもあります。歯の根は特にむし歯が進みやすいので、歯茎が下がって歯の根が露出していたり、大きく歯が欠損していてあまり歯が残っていないケースは、むし歯が再発すると抜歯につながりやすいので要注意です。

5.歯列矯正に影響することがある。
歯の神経を取ると歯列矯正をしようとした時に、歯が動かないことがあります。

特に、上記の1と2と4については、歯の神経を取った後の最大の問題である、歯の寿命を短くしてしまうという事に直結します。

以上のことから、歯の神経はできるだけ残した方がよく、神経に届くほどのむし歯があったとしても、成功、不成功はありますが、歯の神経を残す努力はした方が良いと考えています。

歯の神経を残すために必要な”隔壁”

では、ここからは当医院での歯の神経を残す治療(以下、保存治療)についてお話ししたいと思います。

むし歯が大きい場合は、もうすでに神経が死んでしまっている時もあります。(この場合痛みがないことが多いです)また、神経が生きていても痛みが強い場合は、神経の保存治療には適さないと判断し、いずれも根管治療に入ります。

まずは、レントゲン、またはCT撮影を行い、画像診断を行います。画像データを元に、根の先に膿がないかも確認します。画像で膿が見えた場合、神経が死んでいることが多いからです。

症状を確認したのちに、神経を残せると判断できた場合、保存治療に入りますが、歯の神経への更なる感染を防ぎ、また適切な薬剤を安全に使用するために『隔壁』を作成します。

▼隔壁作成については、こちらの動画を御覧ください。

通常、隔壁は根管治療時に作られますが、むし歯が大きい場合でも、当院では必ず隔壁を作ってから神経の保存治療を進めます。

隔壁をつくることで、ラバーダム防湿を確実に行うことができます。これらは唾液の侵入を防ぎ、唾液からの細菌感染を回避することが可能になります。これらにより、保存治療の成功率を高めることができるのです。

また、ラバーダム防湿は神経の露出部を消毒する時にも有効です。

消毒剤の中には歯肉に漏れさせたくない薬剤もあるのですが、ラバーダム防湿がそれを防いでくれるので、根管治療同様安心して適切な薬剤を使うことができます。根管治療時以外でも隔壁を作ってから治療に入るのが当医院の保存治療の特徴です。治療の成功率を上げるためには成功しやすいような環境作り(隔壁やラバーダム防湿など)をする必要があるのです。

歯の神経を残す治療”直接覆髄”

当医院では、ラバーダム防湿を行った後に、むし歯の染め出し液で染まらなくなるまでむし歯を完全に除去します。もしも神経が露出してしまった場合にはMTAセメントで封鎖をします。このような神経の保存治療を“直接覆髄”と言います。

歯の神経の露出部を封鎖するのに使われるMTAセメントはとても生体親和性が高く、一定期間消毒効果を保つ材料なので殺菌効果もあります。そのため、直接覆髄の対象は露出した神経の穴が2mm以内と言われていますが(2mmを超えると一般的に神経を取る処置が行われます)、露出した歯の神経の穴が2mmを超えても、さほど痛みが強くなければ、当院では神経をすぐ取らずにMTAセメントで封鎖してしばらく経過をみます。経過観察中に痛みが強くなったり、歯肉が腫れてきてレントゲンまたはCT画像で膿が確認された場合は根管治療に移行することになります。

以上の治療を施したあと、一定の経過観察期間を終え、症状が安定している事を確認できたら、歯の神経を残せたと判断し、最終的な詰め物や被せ物にかかります。もちろん、この時に精度の高い詰め物や被せ物が必要であることは言うまでもありません。精度の高い、隙間の無いピッタリとはまる詰め物や被せものは、歯の神経への細菌感染を防ぎ、良好な状態を長く維持するために必要なのです。

当院では治療の成功率を上げるため、歯の神経の保存治療から詰め物・被せ物治療まですべての工程で高倍率で治療用顕微鏡を使用しています。

以下は、当医院で顕微鏡下で行った“直接覆髄(歯の神経の保存治療)”の動画です。当医院では、治療時に撮影した動画を、治療毎に患者さんにお見せして当日の治療内容を説明しています。