岡野歯科医院
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動画解説

【動画で見る、顕微鏡歯科治療と根管治療:Vol.8】歯根内部吸収(病的歯根吸収)と根尖病変が見られた歯の根管充填までの過程

記事概要

病的歯根吸収の一つである病的内部吸収がある歯に対して、当院ではどのような治療を行っているかを動画解説をまじえてブログにまとめました。病的内部吸収を起こしている歯の治療は、一般的に行われている根管治療よりもケースは遥かに少ないのですが、当院で行った治療の実例を元に説明しています。

1病的歯根吸収とは

病的歯根吸収とは、外力および、炎症、囊胞、腫瘍、再植、移植などにより、歯根が吸収してしまった状態の事をいいます。
そして、病的歯根吸収は、

  • ①歯髄側の歯の壁が吸収される内部吸収
  • ②歯根の外側(歯根膜側)から歯の壁が吸収される外部吸収

の2つに分けられます。

病的歯根吸収の原因は不明なことが多く、痛みなどの自覚症状を伴わないことが多いため、患歯または、患歯周囲のレントゲン撮影などで偶然見つかることが多いです。
病的歯根吸収は進行してしまうと抜歯せざるを得ない場合も多いため、できるだけ早期に発見しなければなりません。早めに発見し、早めに適切な治療をすることで、抜歯を免れるかもしれないからです。

本ブログでは、病的歯根吸収の一つである病的内部吸収がある歯に対して、当院ではどのような治療を行っているかを動画解説をまじえてお話ししたいと思います。病的内部吸収を起こしている歯の治療は、一般的に行われている根管治療よりもケースは遥かに少ないのですが、当院で行った治療の実例を元に説明していきます。

2病的内部吸収を止めるために歯科用顕微鏡が有効

特に、病的内部吸収を起こしていているケースの中でも、吸収が大きく歯根の壁に穴が開いてしまった場合は、予後が悪いと言われています。

そういうことから、病的内部吸収を起こしている歯に対しては、一刻も早く、その内部吸収を停止させることが必要になります。

そのためには、できるだけ早く病的内部吸収している部分の、歯髄組織もしくは肉芽組織を除去する必要があります。

もし、歯髄が生きているならば、病的内部吸収を起こしている場所の組織を含めて全ての歯髄組織を除去します。
歯髄が死んでしまっている場合にも、病的内部吸収部位にある肉芽組織を全て除去します。

病的内部吸収を起こしているところは、吸収が不整形なことも多く治療用顕微鏡を使用しても吸収部位の肉芽組織を取り残すリスクがあります。この肉芽組織を取り残してしまうと、細菌繁殖の足掛かりを残してしますので、再度、細菌感染を誘発してしまうリスクが高まり、治療が失敗してしまう確率を上げてしまいます。

ですので、病的内部吸収がある場合は、治療用顕微鏡を使うのは元より、顕微鏡の倍率を最大に上げながら内部吸収部位の肉芽組織の取り残しがないようにしなければなりません。

しかし、最大倍率で行う顕微鏡歯科治療は、簡単ではありません。

最大倍率を維持しながら治療することを容易にするには、高性能の治療用顕微鏡が必要ですし、また治療部位をより明るく視認するためには高輝度の顕微鏡の光源が必要になります。いずれにしても短い治療時間では、除去すべ肉芽組織を見落としたり、十分な根管の消毒ができません。治療を成功させるためには、時間をかけて高倍率で治療することが重要です。

病的内部吸収部位の肉芽組織を除去する方法は、器具により肉芽組織を機械的に掻き取る方法と、取り残した細かい肉芽組織を薬剤により肉芽組織を溶解する方法の両方が必要ですが、いずれも長い治療時間を必要とします。

3根管充填はMTAセメントが最適

内部吸収部位の肉芽組織を綺麗に除去できているのを強拡大で治療用顕微鏡で確認したのち、肉芽組織を除去した根管を封鎖する根管充填に移ります。

内部吸収で根管壁に穴が開いて貫通してしまっている場合の根管充填材は、MTAセメントが最も適していると言われています。

MTAセメントで根管充填するメリットは、

  • ①生体親和性が高く異物反応を起こしにくい
  • ②根管充填部位の殺菌作用を一定期間維持できる
  • ③硬化時に膨張するため、根管や歯根に穴が貫通している部位の良好な封鎖が期待できる
  • ④歯根が貫通している部位の歯根膜の再生が期待できる

の4つが挙げられます。

当医院では、病的歯根吸収の歯は根管充填が終わったのち、一定期間経過を空けてからCT撮影を行います。

そこで、問題解決ができている事を確認したのち、はじめて被せ物治療に移ります。
被せ物治療では、せっかく上手くいった病的歯根吸収治療を無駄にしないため、最も高い精度の被せ物治療をしていきます。(ピッタリと適合する被せ物)

これまでも繰り返し説明してきた通り、一般的な根管治療の時と同様、精度の悪い被せ物をすると、それが元で歯と被せ物のつなぎ目から再感染してしまいます。結果、病的歯根吸収を改善するための根管治療が失敗したり、むし歯が再発して、抜歯になってしまうかもしれないからです。(根管治療の5.被せ物の精度(適合)に飛ばす)

以下は、病的内部吸収をしていた患者さんの歯の治療動画です。病的内部吸収があったとしても、歯科用顕微鏡で正しく治療すれば、必ずしも抜歯とならないこともあります。お気軽にご相談ください。